サディスティック星の皇子こと沖田総悟のことを、皆さんはご存知だろうか。私の周りの多くはこう答える、あぁあのカッコイイ人ね と。確かにその通りだ。否定はしまい。だが1つだけ言わせて欲しい。あれは見かけ倒しの変態男だ!

ことの始まりは私が小学生になった頃。家族総出で憧れの一軒家に住むことになり、閑静な住宅街へと引っ越した。そして、引っ越し先のお隣りさんに挨拶をしに行った時 私の人生は大きく崩れ始めてしまった。勘の良い人ならもう分かるかもしれない。そう、そのお隣りさんこそ、かの沖田総悟だったのだ。

小さい頃は良かった。私より1つ年上だったからか、幼い私に色んな事を教えてくれた。(どれも無駄な知識だったがあえてそれは伏せておく)お姉さんのミツバさんだって優しくしてくれたし、近所では美男美女の兄弟として有名だった彼らに仲良くして貰えて、正直私も誇らしかった。

そんな安らかな平和はあっという間に崩れる。思春期、いわゆる、第二次性徴があらわれ,異性への関心が高まる時期から、沖田総悟の本能が目覚め始めた。

沖田総悟13歳
毎日のようにパンツの色を尋ねられる。
沖田総悟15歳
階段を上がっていると無表情でしゃがみ込みパンツが見えるのを狙う。
沖田総悟17歳(今ここ)
会う度にブラのカップを尋ねられる。時々 隙を見て揉んでくる。

ニコニコと笑って私の名前を呼ぶあの頃の可愛らしい沖田総悟は最早幻想と化してしまった。現在も、16歳の華の女子高生の部屋に居座ってナチュラルにタンスを物色し下着に文句をつけている。出ていってくれ。


「相変わらず地味なヤツばっかりだねィ。仕方ねぇ総兄ちゃんが今度プレゼントしてやらァ」
「いらない」
「照れんなって。なんなら俺の前で着てくれても良いんだぜィ」
「ミツバ姉ちゃーーーん!!総兄ちゃんが変態発言ばっかりするーー!!」
「ちょ止めろマジで悪かったって」


隣の家にも聞こえる程の声で叫べばこちらのもの。慌ててタンスから離れた総兄ちゃんは、相変わらずミツバ姉ちゃんには滅法弱いようだ。苦笑しながら下着をタンスにしまっていると、その様子を眺めていた総兄ちゃんがぽつりと言葉を漏らした。


「…なーんか、大人っぽくなったねィ」
「え、私?」
「うん、お前」
「ほ、ほんと?なんか照れるなあ」
「うん、なんか、洗濯物畳んでる主婦みてぇ」
「…それ褒めてる?」
「主婦っつっても老年な。つまりけなしてる」
「全国の老年の主婦の皆様に謝れ」


ははははっ と珍しく高らかに笑い声を上げる総兄ちゃんに、思わず赤面しそうになって(イケメンというのは罪なものだ)慌てて話題を変えてしまおう と、最近変態度合いが高くなってきている総兄ちゃんへのお説教タイムに入ることにした。

人のパンツを狙いすぎ
ブラのカップを聞いてもメリットは無い
胸はさすがに揉むな犯罪だ
正論をたくさん述べて、自分でもうるさいなと思う程ガミガミ言ってやった。その間、総兄ちゃんは顔を伏せていて その表情を伺うことは出来なかったけれど、きっと納得してくれたと信じている。

不意に総兄ちゃんは顔を上げた。その顔は明らかに不満に満ちていて、少し意表を突かれた。なんだか今日は総兄ちゃんの色んな表情が見れる日だな。いつもぼんやりしているのに。


「俺は誰彼構わずパンツが見たいんじゃねェや」
「え?あ、そうなの」
「…意味分かってねーだろ」
「意味?」
「あー…、お前の胸だから気になるんでィ。あー、いやちょっと違うな…」
「は?」
「……まぁ良いわ。またちゃんと機会作ってから言う」
「?了解しました」


またな。と頬をぽりぽり掻きながら気怠げに部屋を後にする総兄ちゃんの後に続いて、見送りをしようと慌てて部屋を出て階段を駆け降りようとしたら、急ぎすぎたせいか最後の6段くらいで見事に踏み外して面白いくらいに飛んだ。トリプルアクセルだ。嘘だ。
ぼふっと不時着した先は総兄ちゃんの腕の中。今度は真っ青になっていた。初めて見たこの顔。危ねーだろ!気をつけやがれィ!と怒鳴られても、なんだか可笑しくてクスクス笑っていたら 照れ臭そうに総兄ちゃんも私を抱える腕に力を入れた。

そしてそのまま、額に柔らかく温かいもの。「…わり」一つだけ呟いて私を地面へ降ろしそそくさと帰って行った。10秒後、額へ当たった何かを認識してから、私は初恋が復活してしまわないよう家中を駆け回ることになる。








20130123


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