目が覚めた。いや、目が醒めた。先日からおかしいのだ。私には彼氏などいない。大切なことなので2度言うが彼氏はいないのだ。2人ベッドで恋人よろしく仲良く寝転がる彼氏などいないのに、なんか、いる。
現在進行形で、私の隣で静かに眠るこの男は、山崎退。なんやかんや色々とあって知り合った男だ。しかし、ただそれだけ。私の部屋に上げる義理、ましてや私のベッドで共に眠る権利などこいつには無い。

ベッドの下から自分のスリッパを出し、スコーン!と中身のなさそうな音を立ててザキの頭を力一杯殴った。少しすっきりした。


「いったたた…あ、おはよう」
「おはようじゃない。ザキなんでここにいんのキモいよ出てって」
「朝からひどいなあ、俺達恋人じゃん。もう少し優しくしろよな」
「恋人じゃねーよ」


もう1度大きく振りかぶって殴った。ストライク。ぐぇとか言いながらザキは大袈裟にもがいている。
先日、約2日ほど前からさっきまで、私はザキのことを恋人と認識していた。しかし別に、2日前に付き合い始め先ほど別れた、というわけではない。よくわからないが自然な形で恋人になり、私もそれに違和感を感じないまま先ほどまでに至っていたのというのだ。今では違和感ありまくりである。

「ねえザキ、私になんか薬でも盛った?さっきまで、ほんとにザキを恋人と思ってたみたいなんだけど」
「薬なんてとんでもない…ただの催眠術だよ」
「え?」
「いやなんでも」

ぼそりと顔を背けながら言うザキの目は泳いでいた。絶対何かを隠している。ベッドの端に座るザキのそばに詰め寄ると、顔をほんのり染めながらザキは私の腕をそっと掴んだ。

「…ザキなにを隠してんの?」
「…俺さ、最近黒魔術を習得したんだ」
「………は」
「それで、どうしても君と恋人同士になりたかったから、ちょっとアレをアレしたら恋人になれたんだ。2日間だけだったけど」
「え、いや、黒魔術ってなに」
「いつの間にか習得してたんだ。きっと俺の為に神様が恵んでくれたんだね」
「は」
「お手軽便利だよね、黒魔術」


とりあえず大きく振りかぶってザキを窓から投げた。
黒魔術のひと、キモチワルイ。







20121102

オチなどない



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