「だんご!好きだ結婚してくれ!」

犬だ。と思った。いや、犬とひとまとめにしてしまうのもなんだか心もとない。なんだろう、犬というには忠犬のような従順さが足りないし気まぐれだし。だけれど、行く先々に付いて来たりと犬らしい面もある。とにもかくにも、現在私は とある男に悩まされているのである。

「はじめまして坂田サン」
「はじめましてじゃねーよ相変わらずつれねーな、結婚しようぜ」
「だめだコイツ日本語通じねえ」

このちゃらんぽらん、坂田なんとか。下の名前は特徴的な名前だったけど忘れた。興味がまず無いのだ。いつの日だったか、初めて出会ったその日に私に惚れたらしいこの男は 行く先行く先で出会う…とまではいかないが まあ良く会う。この世界が狭いことは承知しているつもりだが いささか不安になる程度には偶然が重なって、今日もまた熱烈アピールを食らっている。

この坂田なんとかサンは、「俺ァ知る人ぞ知る万事屋の社長をやってんだ。だから将来安泰だ結婚しよう」と何度も言ってくる。が、万事屋ってそんなに収入ねえだろ と切り捨てたら図星なのか涙目になってすぐに押し黙る面白い人だ。

だからといって私が興味を持つかといったら、甘い。基本的に美人な女の子が大好きな、少々オッサン要素の濃い私は 今まで男性経験は数える程度はあったが、どれも相手に興味を覚えず終わってしまった。飽き性かと言われればそういう訳ではないが、興味を持つか持たないかで 私の価値観は大きく左右されるらしい。

「それ何回も聞いたっつーの」
「…じゃあ私のこと諦めれば」
「だが断る」
「それを更に断る」
「更にそれを断る」
「めんどくせえ!」

本当に、めんどくさい男に気に入られたもんだ。この男は私に、なにか運命的なものを感じたとほざいているが、恐らくそれは杞憂に過ぎない。残念だが私は坂田サンからは何も感じない。特に理由は無いが、俗に言うイケメンはどうも苦手なのだ。坂田サンもその部類に属している、と思う。苦手なタイプにドストライクだな、とひとつため息を吐いて空を見上げた。





20121220
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