以前、というかかなり昔の事になるのだが、少し気になっていた男の子の誕生日に、勇気を出してプレゼントを渡そうとした時期があった。
わたしはいわゆるチキンで、いざ渡そうとすれば見事なまでに逃げ腰になり、彼の前から姿を消してしまう。そう、それは瞬歩並の速さで。
結果的に、彼にはプレゼントを渡す事が出来ず プレゼントは私の部屋の机の中に眠っている。今ではその彼とは通う学校も変わり、彼の事を好きだった気持ちも綺麗に無くなった。そんな簡単に無くなる気持ちだったのだから、大した恋心でもなかったのだろう。

なぜ急にこんな事を思い出したのかというと、私は今、自室を掃除しているからだ。不要な物でもギリギリまで残しておきたい派だが、余りの自分の部屋の汚さに愕然としたので そろそろ思い切って捨ててやりましょう計画を決行することにした。そこで先ほどの彼へのプレゼントが出てきたのである。

「…手袋ねぇ、高かったよねこれ。」

深緑色のシンプルなデザインをしたそれを、プレゼント包装してあった袋から取り出す。これを捨てるのはなんだか勿体ない。しかし自分が着けるにしては、男物なのでなんだか微妙だ。
…、ゴミ出しに行った時の気分で、捨てるかどうかは決めよう。と、とりあえず後回しにしておくことにした。


――――――――――


「あ、奇遇ですねゴミ出しですか?いやあ僕もなんですよ。気が合いますねえ」
「なんでいるの」

近くのごみ処理場まで行くと、最近良く見る白髪の変態がそこにはいた。なぜだ。こいつまさかストーカーか。

「ストーカーじゃないですよ、知りませんでした?君と僕の家、近所なんですよ」
「それほんとに初耳。」

だって言ってませんもん、とにっこり笑う変態に殺意が芽生えた。だから良く会うのか。変態、もといアレンはゴミ出しは終わった後らしく、さながら紳士のように私のゴミ袋を持ってくれた。その際、ゴミ袋の1番上に入れていた手袋がぽろりと地面に転がり落ちた。変態は目ざとくそれを見つけ拾い上げ、まじまじと手袋を眺め私の顔と比べ見る。なんだよ。

「君、趣味変わりました?こんな感じの好きじゃなかったよね?もうちょっと可愛らしい感じの方が好きでしょう」
「…(なぜ私の好みを知ってるんだ)
前好きだった人へのプレゼントよ。捨てようか悩んでて」
「…ふーん」

面白くなさそうに手袋を見つめ、アレンは無言でポケットにそれをしまい込んだ。…ん?しまい込んだ?

「何してんの?」
「え?あぁ、エコです」
「は?」
「前好きだった彼には渡せてないんですよね、これ。それに捨てようか悩んでるってことは、これから渡すつもりも無いんでしょう?なら、僕が貰ってあげますよ」
「な、なんでよ。しかもそれがどうしてエコになるのよ」
「そうですねぇ…


貴方が捨てた物の再利用、つまりエコなんです


…少しイラっときたけど
まあ許してやろう。







20121003
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テーマ「人外ファンタジー」
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