しあわせのかたち-4/4-






***


ソファに並んで座り、他愛のない話をしながらグラスを傾ける時間―なんだかゆったりとした時間が流れているような気がしているのはライトニングだけなのか、それとも。
夕食の材料と一緒に買ってきた安いウィスキーのボトルも、気付けば半分ほど空いている。
時間を気にせずのんびりと過ごせるのが久しぶりだからと分かってはいるが、自分もフリオニールもいくらなんでもペースが早過ぎないだろうか。そんなことを考えながら持ち上げたグラスの中で、ロックアイスがからんと音を立てる。
目の前のフリオニールの顔は、陽に灼けた肌の上からでも分かるくらいには紅い。そろそろ止めてやったほうがいいだろうか、なんて考えが頭を過ぎらなかったと言えば嘘になる。
だが、アルコールの力かそれともライトニングと一緒にいられることへの喜びからか―普段よりも饒舌なフリオニールの話を聞いているとなんだか飽きなくて、飲みすぎだなんて止めるのをつい忘れてしまっているのも事実。

「そんでさぁ、途中まではバッツが優勢だったんだけど最終的にスコールに丸め込まれてて…口が立つのとディベート強いのとはまた違うんだなぁとか思った」

へらぁ、と笑ったフリオニールはやはり相当酔っているようだ。本人は気付いていないだろうけれど、ゼミでのディベートの話はこれでもう4回目だったし。
なんだか可笑しくなって、笑いを堪えることもなくライトニングはフリオニールの髪をゆっくりと撫でた。何故撫でられたのか分かっていないのだろう、フリオニールはきょとんとした表情でライトニングを見つめてはいたが。

「…ライト?」
「お前を見ていると飽きない」
「そう…かな。自分ではわかんないけど」

首をかしげるフリオニールの髪をもう一度撫でてやると、フリオニールはくすぐったそうに首を竦めてみせた。
なんだかその仕草を見ていると大きな犬でも撫でているようで、それもまた可笑しく思える…こんな些細なことで笑える自分も相当酔っているのかもしれない。

「こうして心を許せる存在が近くにいるというのは…幸せなことだな」
「俺はずーっと幸せだよ、ライトが俺を好きになってくれたその瞬間から」

酒の勢いもあってのことだろう。歯の浮くような言葉をさらりと口にして、フリオニールはまたへらっと笑ってみせる。
相貌を崩したフリオニールが無性に愛しく思えて、ライトニングは反射のようにフリオニールの背中に腕を回してその大きな身体を強く抱きしめる。

「…これからも私の近くにいてくれるか?」
「当たり前だろ?って言うか、多分俺のほうがライトから離れられない」

耳元で囁かれた言葉に導かれるようにライトニングの心の奥底からあふれ出す感情。
それが、今自分を満たす優しくてで穏やかなぬくもりこそが「幸せ」なのだと確かめるようにライトニングはフリオニールの背中をぽんぽんと撫でる。
そこにある存在、自分にとっての幸せの象徴を確かめるかのように。それに呼応したように顔を上げたフリオニール―ふたつの視線が引き寄せられ、唇が触れ合ったのはふたりにとってはとてもとても自然なこと。
口付けの後に交わされた微笑みはどこか甘酸っぱくも感じる。フリオニールがそばにいるからこそ感じられる想い―それを確かめるように、ライトニングはフリオニールを抱きしめる腕を解くとその肩にそっと寄り添った。
愛しい人がそばにいる、とても些細だけれどとても大きな幸せを確かめるように―


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