Hands-2/3-






***


歩いていたふたりはやがて、小高い丘の上へとたどり着く。
今日は他の仲間が先行して偵察をしているので、こうしてふたりだけでゆっくりと語らう時間を取ろうということになってこうして一緒にいるのであった。
並んで座り、眼下に広がる景色を見遣る。荒れ果てた世界ではあったが、こうしている間は自分たちが戦いの中にいるのだと言うことを忘れることが出来るような気がしていた。

「……なんか、平和だな」
「平和なのはここだけだがな。先行偵察に向かった連中が何を見つけてくるかでこのまま暫く平和が続くのか、それともまた戦いが始まるのかは変わるだろう」
「まあ、そうなんだけどさ……俺は今こうして、ライトと一緒にいられるだけで幸せだなあって……思う」

言葉にした後、フリオニールは顔を真っ赤にしてそのまま俯いてしまった。自分が放った言葉の気障さに自分で気付いたのだろうか、俯いたままぽつりと「俺何言ってるんだろ」などと小さく呟き、その言葉を聞きとめたのであろうライトニングはくすりと声を立てて小さく笑った。
そのまま走る沈黙――ライトニングの手がそっと、フリオニールの方に伸ばされている。その顔はフリオニールも、きっとライトニング自身も気付いてはいないけれどどこか決意を秘めているように見える。
この空気の中ならば、そう思ったのだろうか。地面に置かれたフリオニールの手まであと数センチと言うところまで手を伸ばしたライトニングだったが、あと少しで手が触れ合うと言うところで俯いていたフリオニールが不意に顔を上げる。

「あ、そう言えば……」

急に顔を上げたフリオニールに驚いたようにライトニングは伸ばした手を引っ込め、気まずそうにフリオニールから視線を反らした。
フリオニールの側はそんなライトニングの行動を不思議そうに見遣っていたが、特に気にする様子もなく言葉を続けた。

「最近イミテーションの動きが活発になってる気がするってセシルが言ってた。あんまりのんびりしてばかりもいられないのかも知れないな」
「……確かにな。それは私も感じていた……だが」

ライトニングは一度反らした視線をフリオニールの方に戻す。フリオニールの真剣な眼差しを真っ直ぐに見つめ返すライトニングの瞳は彼と同じように真面目に見えて、その奥にフリオニールにしか見せない優しさを滲ませている。
その瞳を真っ直ぐに見つめ返すことしか出来ず、フリオニールは小さく息を呑む――きっとそんな行動には気付いていないのであろうライトニングはフリオニールを見つめたまま言葉を繋いでいた。

「だからこそ、戦わなくてもいいと思える間はこうしてお前といられる時間を大切にしたい……なんて、私らしくない考えかもしれないが、ふとそんなことを考えた」

淡々としたライトニングの呟きに、フリオニールは先ほど自分が放った言葉に対してそうであったように頬を染める。
ライトニングのストレートな言葉はフリオニールをそうやって照れさせるのに充分な力を持っていることに彼女は気付いているのだろうか、そんなことを考えてフリオニールはライトニングの横顔をちらりと伺う。そのまま、思い出したようにライトニングの手に向かってそっと腕を伸ばした。
あと少しでその手に掌を重ねることが出来る、そんな位置まで動かしてはみたもののどうしても触れることができない――躊躇っているフリオニールは視線をちらりとライトニングの横顔に映し、そして手を動かそうとした……その瞬間に、不意にライトニングの視線がフリオニールの方へと向き直る。
気付かれたかと焦ったのだろうか、フリオニールはのけぞるように伸ばしかけていた手を戻す。その時の表情が相当に焦っていたのだろうか、ライトニングは再び訝しげな表情でフリオニールをじっと見据えていた。


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