その目に映るエトセトラ-3/3-






「……何にせよ、ライトが幸せそうで何よりだよ」
「そうだな……今こうして、あいつらが笑っていられるのを見ているとあの時の俺の選択は間違ってなかったと思える」

呟いたラグナの言葉に呼応するように言葉を重ねたカイン。彼らが想いを馳せているのはかつての――希望を遺す為に敗北を選んだ戦いのときのことなのかもしれない。
希望を繋ぐ為にフリオニールへの想いを断ち切ったと自ら言葉にしていたライトニングの、その断ち切ったはずの想いは――神々の戦いが既に終わったはずのこの世界で、こうして再び結び合わされ実を結んだ。
ラグナやカインはライトニングの想いを知っていたからこそ――今の、幸せそうな彼女を見ていて思うところもあるのだろう。

「あの時のライトは……気を張っていたし、私達を引っ張ろうと、弱音を吐かないでいようとしていた。でも、それで何もかもを抱え込んじゃってた……」
「でも、今のライトは違いますよね。抱え込んだものをぶつける相手がいる。弱みを見せながらも、その人の為に強くなりたいと願える――わたしから見ても今のライトはきっと、とても幸せだと思うんです」

勝利を見届けることが出来ないと分かっていた戦いの中、誰よりも強い意思を持っていた――否、誰よりも強く振る舞っていたライトニングと今のライトニングは違う。
戦う目的が未だつかめない、一歩間違えれば絶望の淵に飲み込まれてしまう世界の中で彼女が変わらず凛としていられる影にはその彼女を受け止められる存在がある。一緒にいる時間が長いからこそ、ティファやユウナには感じるものがあるのかもしれない。

「相変わらずオレには良くわかんないけどさ……皆が楽しいならオレも楽しいし皆が嬉しいならオレも嬉しい。ライトだけに限った話じゃないけどな」

事情を飲み込めていないながらも、仲間達の幸せを、笑顔を願う。ヴァンのその言葉に一行は顔を見合わせて大きく頷きあった。
かつて苦しい戦いを共にし、絶望の中互いの存在を支えとして戦い続けた彼らだからこそ――戦いの中とは言え「あの時」よりは随分と平和な今、大切な仲間であるライトニングが心穏やかに過ごせるということをまるで自分のことのように喜び合っているのかもしれなかった。

「……なんだ、皆集まって。随分楽しそうだけど何の話だ?」

聞こえた声に顔を上げると、そこに立っていたのは――フリオニール。その一歩後ろに控えるように先ほど去っていったライトニングの姿もそこにはあった。

「ん?秘密、秘密。なあ?」

にぃ、と子供が悪戯をするような笑顔を浮かべたラグナに、全員が大きく頷く。流石に、当事者であるふたりに自分たちのしていた話を聞かせるわけには――

「いやさあ、ライ……むぐっ」

そこまで気を回せなかったのか何も考えずに口を開いたヴァン、その口はすぐにティファの手によって塞がれる。小声でバカ、と咎めておいてからティファは誤魔化すように笑いを浮かべてみせた。

「大したことじゃないから気にしないで。それより買い物に行ってたんじゃなかったの?」
「ついさっき帰ってきたところだよ。ティーダも荷物置いたらすぐ出てくると思う」

付け加えられた一言は明らかにユウナに向けられたものだろう。それが分かったのか、ユウナはありがとうございますと呟いて大きく頷いていた。
それだけを告げるとフリオニールはすぐに踵を返す。ライトニングはその後についていきかけて――一度だけ、振り返った。

「……人のいないところであまりつまらない話をするな」

それだけを言い残してすぐにフリオニールの後を追ったライトニングに、一行は顔を見合わせ……すぐに声を上げて笑い始める。
恐らくヴァンが言いかけたことだけで自分が話題にされていたのだと気付いたのだろうが、ライトニングの表情は彼らが見て分かるくらいには――

「照れ隠し……だな、今のは」
「からかわれたらマトモには返せないだろうからなー、ライトは真面目だから」

カインとラグナの言葉にティファとユウナは笑いを堪えながら大きく頷く。ヴァンは相変わらず分かったような分からないような顔をしながら4人と、そしてライトニングが去っていった方向を交互に見遣っていた。
その様子が可笑しかったのか、彼らは再び声を上げて笑う。
そのときの彼らの笑い顔は、まるで戦いの中に身を置いているとは思えないほどに楽しそうなものに見えていた――先刻フリオニールが言ったとおりに、荷物を置いて出てきたティーダが一瞬声をかけるのを憚る素振りを見せたくらいには。


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