やさしいてのひら-3/3-






「ライトはいつだって誰より強くあろうとして頑張ってるんだからさ…ちょっとくらい、弱いところを見せてもいいと思うんだ」

背中に回された腕の力が少しずつ強くなる。抱きしめる力が、フリオニールの暖かさが、そして優しい声が―自分の心に自分でつけた傷を癒していくのを、ライトニングは感じていた。
時々ひどく頼りなく感じられるのに、こういうときのフリオニールは何故かとても頼もしくて。

「そりゃ勿論、ライトにだってプライドとかそう言うのがあると思うからいつでもどこでも弱いとこ曝け出せなんて言えないけど、でも」

背中に回されていた手が後頭部に動き、ゆっくりと引き寄せられる。ちょうどフリオニールの肩に顔を埋める格好になったライトニングは、躊躇いがちながらもその背中に腕を回した。
目の前にあるぬくもりを、自分の弱さごと包み込もうとしているフリオニールの存在を確かめるかのように―
フリオニールの手が、ライトニングの柔らかい髪を撫でる。その感触がくすぐったくて、それでいて心地いい。ライトニングは目を閉じ―視覚の代わりにフリオニールが自分に触れる全ての場所で、その存在を確かめている。

「俺には全部見せてくれていいんだ。弱いところも、情けないところも、悔しいって思ってるところも全部」
「……お前は私を甘やかしすぎだと思うんだがな」
「ライトが自分に厳しすぎるだけだよ。でも、ライトが自分を簡単に甘やかしたりできるひとじゃないことは俺だって良く知ってるから…その分、俺がめいっぱいライトを甘やかしたっていいじゃないか」

フリオニールの言葉はどうしてこんなに優しいのだろう。
戦っているときは勇敢な戦士の顔を見せているのに、どうして自分に向けられる言葉はこんなにも安らぎを感じさせるのだろう―
フリオニールの肩に顔を埋め、その大きな掌に撫でられるたびに自分を固めている強がりが剥がれて溶かされていく。甘やかされすぎだと分かっているのに、どうしてもフリオニールから離れることが出来ない―
しっかりとフリオニールにしがみついたまま、ライトニングは少しだけ顔を傾けてフリオニールの耳元に唇を寄せる。

「…フリオニール」
「ん?」
「お前がそう言うのなら…もう暫くはこうしていたい」

それが甘えだということは分かっている。
だが、目の前のフリオニールがそれを許してくれる存在だと知っているから―今は、思う存分その存在に甘えていたかった。

「ああ。ライトが望むなら、いくらでも」

髪を撫でる手がゆっくりと滑り、ライトニングの頬に触れる。そのまま顔を上げると、誘うように目を閉じた―すぐに触れる暖かい唇が、抱きしめられているのとはまた違う安らぎをライトニングにもたらす。
触れ合った唇をすぐに離すと、フリオニールの額にこつりと額をぶつけてみせた。間近にある琥珀色に映った自分の表情は、自分でも見た事のないような穏やかな笑顔。
言葉はないまま、フリオニールの手がゆるゆるとライトニングの髪を撫でる。まるで子供にそうするように動く優しい掌がくすぐったい―
自分よりも年下のフリオニールに、子供をあやすような調子で宥められている。相手がフリオニールでなければ馬鹿にされていると感じ、些か面白くないと思ったかもしれない―だが、フリオニールのその手は間違いなくライトニングの張り詰め落ち込んだ心を癒し、掬い上げている。

「フリオニール」
「ん?」
「…お前がいてくれて良かった」

背中に回した腕に力を込め、目の前にある琥珀色をじっと見つめる。その言葉に嘘などなく―今のライトニングにとって、目の前にあるフリオニールの存在は何よりも大切なものに思えていた。
甘えも弱さも情けなさも、凡そ人には見せられないところを全て曝け出しても自分を嫌うどころか、受け止めようとしてくれる。時々頼りなくも見えるのに、誰よりも自分を甘えさせてくれる存在―それが、とてつもなく有難いと感じられた。

「俺だって、ライトがいてくれてよかったって思うことが多いから…俺に出来ることなら、何でもしてあげたいんだ」

自分に触れる掌と同じくらい優しいその言葉はライトニングの耳を通ってその心を擽る。
誰かに甘えることなんて、きっとフリオニールに出会う前の自分には許されなかったこと―だがそれを、全て受け止めてくれる優しい掌を離したくない―フリオニールのぬくもりに甘えるように寄り添ったライトニングを癒すことが出来るのは、そこにある掌だけなのだから。



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