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 一緒にいたいと言われたときにこうなることは覚悟はしていたし寧ろ自分がそれを望んでいたことも否定はしない。だが――その最中には気にならなかった様々な出来事が、冷静になってみるととてつもなく恥ずかしい。そんなことを思う時点で自分らしくないと言うこともサイスは充分に分かっているがそれでもなんだか――キングの顔を、見ることが出来なかった。
 戦場に出ている最中でさえこんなに早く鼓動を刻んだことがあっただろうか。なんだかまるで自分が自分でないようで、そう感じる原因が背後にいるキングだと分かっているからこそ余計にそちらを見ることが出来ないまま。
 やがて、背後で気配を感じる――自分と同じように横たわっていたキングが身体を起こしたのだろうと言うことはサイスにも分かるのだが、それでもやはりそちらを見ることがどうしても出来ない。
 視界に映っていたのはすっぽり被っていたシーツの白だけだったはずが、目を覆っていたシーツがめくられて上から覗き込むように見つめられる。やっぱりなんだか恥ずかしくて、視界に映ったキングからは目を反らしていた。
「……何か気に食わないことでもあるのか?」
「そう言うんじゃない……あんたには分かんないだろうけど」
「もしかして、人並みに恥ずかしがってたりするのか――お前らしくもない」
 揶揄うように呟かれた言葉に僅かに苛立ちを感じはするものの、キングの言うことが別段失礼と言うわけではないことだってサイスには分かっている。なんせ、自分でも思っていなかったのだ――事を終えた後がこんなに恥ずかしいだなんて。
 顔が熱いのはきっと気のせいだ。先ほどまで身体中を駆け回っていた熱が全て顔に集まってきているだけだと自分に言い聞かせ――その、「先ほどまで」のことを思い出すとなんだか余計に気恥ずかしい。最初こそ痛いだのなんだのと文句を言ってはいたものの、最後には強請るような言葉まで口にしていた……ような、気がする。
 キングの視線から逃れるようにうつ伏せになって枕に顔を埋めた。それと共に聞こえる、かすかな笑い声。
「恥ずかしがるようなことは何もないんだがな。まあ……サイスがあんなに可愛い顔するなんて俺も思ってなかっ」
「っるさいんだよ!」
 キングが言い終わるよりも先に反射的に身体を起こし、先ほどまで顔を埋めていた枕をキングの顔面めがけて投げつけていた。
 流石にこの至近距離から枕を投げるのは予想外だったらしく、枕が直撃した瞬間にごふっとかなんとか情けない声を出したキングの腰の辺りに落下した枕を素早く拾い上げるとサイスは再び枕に顔を埋めた。
「あんたは鈍いから分からないんだろうけどな、何言われようと恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ馬鹿。汲み取れこの朴念仁」
「酷い言われようだな」
 抗議するような言葉とは裏腹にキングの声色は優しい。その声音と同じように優しく、無骨な手がサイスの髪に触れた。緩やかに髪を撫でる手が心地良い――自分の言動が全て照れ隠しなのを分かった上で、そこまで込みで受け止めた上で向けられる愛をひしひしと感じて――苦しいような、切ないような。それでいてどこか甘酸っぱい感情に支配されながらサイスは黙ってキングに髪を撫でられ続けていた。
 やがて、再びベッドが軋む音。それと共に、うつ伏せになった背中にシーツ一枚を通して感じるキングの体温――背中越しに抱きしめられているのだと気付くのには、然程時間はかからなかった。
 振りほどいたり枕を投げたり、そんな素直じゃない行動を取ろうと言う気にもならない。寧ろ、こうして側で抱きしめられていることがとても幸せなことであるかのように感じられて――サイスはこのまま時間が止まればいいのになんて考えた後、自分らしくないと頭の中だけでその言葉を否定していた。


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