「La vie en Rose」本文サンプル






 フリオニールの肩に顔を埋めたまま呟いたライトニングは、ほんの僅かの間の後にややあって思い立ったように顔を上げる。再びぶつかり合う視線は互いに笑みを帯びていた。先程は作り笑いでしかなかったはずのフリオニールの表情も、気づけば今は正真正銘の笑顔になっている。
 やがて笑みを交し合ったまま、ライトニングの額が自分の額にそっと当てられる。こつん、と小さく骨と骨がぶつかり合う音。間近に見えるライトニングの美しさに、いくら見慣れているとは言えフリオニールの顔は自然と熱くなっていた。間違いなく自分の恋人のはずなのに、こうして触れ合ってその美しさを目の当たりにするだけで高まる鼓動。美人は三日見れば飽きる、なんて言っていたのは誰だっただろう、それは思い出せないがフリオニールははっきりと思っていた。飽きることも慣れる事もなく、いつまでたっても自分はライトニングの美しさに目を奪われてばかりだと。
 フリオニールがそんなことを考えているのを知っているのかいないのか――ライトニングは口元に笑みを湛えたまま言葉を繋ぐ。
「……お前と一緒にいられることで、もっと強くなれるような気もしているし……な」
「俺といられることで?」
「さっきも言っただろう、お前は自分の弱さと向き合う強さを持っている。そんなお前を見ていると私も負けられないと思うし、それに」
 頬に触れた掌が一瞬だけ離れ、ライトニングの指先がフリオニールの頬をなぞる。くすぐったいその感触に僅かに身をよじりながらもライトニングをしっかりと抱き寄せた腕を解くことはない。
 抱きしめられていることに気を良くしたのだろうか――ライトニングの笑顔は更に美しく艶やかになったようにフリオニールには見えていた。その艶やかな笑顔が、フリオニールだけに向けて真っ直ぐに言葉を放つ。
「……お前の隣に並び立つのに相応しい強さを持っていたいと思えた」
「ライトは……強いじゃないか。俺なんかより、ずっと」
「だがお前はもっともっと強くなるんだろう?それなら私だって、もっと強くなるお前に相応しい強さを持っていないといけないだろう」
 問い返された言葉にはっと気づかされ、フリオニールは真っ直ぐにライトニングを見遣る。視線の意味に気づいたのか、ライトニングはどこか勝ち誇ったようにも見える笑顔をフリオニールに向けていた。
 ライトニングには敵わない、その笑顔にふとそんなことを思わされたりもして――それがなんだか、ほんの少し悔しいような気さえしている。自分はライトニングには勝てないのではないかと、そんなことをついつい考えてしまう。
「いったいいつまでこの世界にいることになるのかは分からない。だが、この世界にいる間はもっと強くなるお前と一緒に成長していきたい。私はそう思っているが」
「そ、それは……俺だって」
「そう言うと思った。と言うより――ここで迷いなくそう言うからこそ私はお前を愛したんだろうが、な」
 小さく声を立てて笑ったライトニングが微かに顔を動かす。触れ合っていた額は離れ、その代わりに触れ合ったのは先程まで言葉を投げかけあっていた唇――瞼を閉じる間もなくライトニングによって奪われた唇はすぐに離れ、ふたつの視線が緩やかに絡み合った。


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