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「おのれギルガメッシュ、先ほどまで目の前におったのにいつの間に姿を消しおった」

のそりのそりと歩くエクスデスは、かつて己の部下であったギルガメッシュを探していた。
彼の手の中にある紙片には「召喚石:ギルガメッシュ」と書かれている。こんなものを持っているとすればギルガメッシュ本人以外にありえないだろう。
紙片を見た段階でギルガメッシュから無理にでも奪い取っておけばよかった、などと考えながら相変わらずのそりのそりと歩くエクスデスの背後から「何か」が飛んでくる。
気配を察知しすんでのところでかわした「それ」は皇帝の放ったフレアであったと自分の横を掠めた後岩にぶつかって弾けとんだ炎の塊を見てすぐに思い至った。

「何をする、皇帝よ」
「…こんな戦いとは言え虫けらどもに負けるのは癪に障る。貴様ももっとキビキビと動いたらどうだ」

杖を手に不機嫌そうにそう言う皇帝の姿を見て取ると、エクスデスは磁場転換を用いてすぐに間近へと近づいていた。
磁場転換で余計皇帝の表情が不機嫌そうになったのは、まるで亀の如くのそのそと歩いていたエクスデスが歩かずとももっと素早く移動する手段があるのだということに気がついたからだろう。

「そんな方法があるのならもっと早く歩こうという気にはならないのか」
「何故わざわざそんな無意味なことをせねばならない?」
「貴様…今この場でフレアの炎で灼かれたいか」

再び杖を振りかざした皇帝を宥めるようにエクスデスは両の掌をそちらに向ける。
流石にこんな戦いとは言え、その最中に一応味方である筈の皇帝に攻撃をされるというのもあまり気分の良いものではない―そう思っての行動に対し、皇帝はふんと小さく鼻で笑うと振りかざした杖を納めた。
安心したかのようにエクスデスが息を吐いたところで、二人の耳に届いたのは軽い足音。

「一体こんなところで何をしているのです」
「…アルティミシアか。その台詞、そっくりそのまま貴様に返してやろう」

足音と声だけで誰なのか分かったのであろう皇帝は視線をアルティミシアに向けることもなく言い放つが、アルティミシアはいつもの余裕のある笑みを崩すことなく皇帝の正面へと足を進めてあっさりと言ってのけた。

「私は手に入れるべきものがある目的地がこの近くにあるからここを通りかかっただけです…そう言う貴方は自分の探すものを見つけ出したのですか」
「考えてはいるのだが…これは何のことなんだ。これでは私が探すべきなのが女だということしか分からぬ」

皇帝が目の前に翳してみせた紙片を覗き込むとアルティミシアは首を捻り、エクスデスもまた首をかしげた。
それに当てはまるような者が誰かいただろうか―考えはするもののエクスデスには思い当たるところはない。それはどうやら自分の隣で皇帝の手の中にある紙片を覗き込んだアルティミシアもそうであるらしく。

「騎士と言うからアルティミシアかとも思ったが、アルティミシアは良く考えれば本人が騎士という訳ではない」
「奴はどうだ、ゴルベーザの…」
「あれは騎士ではありますがれっきとした男です、確かに顔立ちだけは女性のようではありますが」

確かめてみなければ分からないだろう、と口にしかけたが実際にアルティミシアが「セシルが男である」ことを確かめている光景を思い浮かべ…どう考えてもアルティミシアがセシルに対してよからぬことをしているようにしか見えず、その光景を頭から振り払うようにエクスデスはぶんぶんと頭を振った。

「何にせよ、こんなくだらない戦いとは言え勝負は勝負だ。我々は一度敗北を喫した汚名を雪がねばならない」
「『こんなくだらない戦い』で、神々の戦いの敗北の汚名を雪げるとは私は思いませんが」

意地になっているらしき皇帝の言葉に、アルティミシアは大きく息を吐く。エクスデスもそれに釣られたかのように大きく頷いていた。

「いずれにせよ、これが誰を指し示すのか―私はそれを見極めるところから始めなければならない」

皇帝がその言葉と共に手の中で握りつぶした紙片に書かれていた言葉…それは、「光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女性騎士」―


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