エピローグ
その後もひとりまたひとりと、両陣営の戦士達が岬へと姿を見せる。
「だから、はっきり仰いなさいな。貴方は何を持って戻ってきたのです?」
「貴様といいあの小娘といい…!だから、何故こんな下らん名前を何度も言わねばならぬのだ!」
やられターメリックの瓶を片手に持ったガーランドがシャントットとそんな口論を繰り広げている所に、のんびりとした足取りでプリッシュとウォーリアオブライト、それにヴァンが戻ってくる。
「お、なんだよネギ坊主もティナもこんなところにいたのか…って、どうしたんだその怪我」
「この怪我のことはそっとしといて。って言うかもしかして…ヴァンはずっと僕達を探してたってこと?」
呆れたような口調で呟いたオニオンナイトだがヴァンは特に意に介する風でもない―
ようやっと仲間達も顔を揃え、そうすることによって何処までもいつも通りなそんな光景。
勝敗がどうであったのかは今、シャントットが数えている最中のようで、それを待つ間の穏やかにも見える時間の中、ふと…思いついたかのように、ティナが一言。
「ねえ…全員集合にはまだ足りない気がするんだけど」
ティナの言葉に、全員があたりをきょろきょろと見渡す。
「ああ、ギルガメッシュならば次元の狭間へ送っておいた」
「…エクスデス貴様、何を勝手なことを」
呆れたようなガーランドの言葉に対して、エクスデスはもはや返事を返すことはなかった。と言うよりも彼のことだから言うのであろう。返すような言葉は無い、と。
そして、思い出したようにセシルがぽつりと呟く。
「…ここに戻ってくるつもりのなかった人を僕はひとり知ってる。でもそれを差し引いてもやっぱりひとり足りない、よね…?」
セシルのその言葉に釣られたかのように、全員があたりを見渡す。そして、コスモスの戦士達だったものが皆声を揃えて…
「………ラグナ!!!」
そう…次元の狭間に飛ばされたというギルガメッシュやここへ戻ってくるつもりの毛頭なかったガブラスはともかくとして、ラグナの姿がどこにもない。
「あいつは一体何処をほっつき歩いてるんだ…!」
「落ち着けカイン、ラグナが道に迷うなんていつものことじゃないか」
フリオニールがそういったのを合図にしたかのように、全員が大きく溜め息をつく。
まだ勝敗は決していないが、こうなってくると勝負どころの話ではなく―コスモスの戦士達は、顔を見合わせたと同時に歩き始めた。
「とりあえず、ラグナ探しに行くか」
「…だな」
去り行くコスモスの戦士達と、それを特に止めるでもなく黙ったまま見送るカオスの戦士達―コーネリアの岬に、静かに風が流れる。
「集計はいたしましたが結果としてはコスモス側の勝利、ですわね。とりあえず、面白いものを色々と見ることが出来ましたわ」
「…我々は貴様の座興の為にこんな下らぬ戦いに借り出されたというのか…」
怒りなのか呆れなのか、その判別すらつかぬ皇帝の呟きだけが、静かにその場に響き渡っていた…