白い波に抱かれて-2/5-






ベッドのほかに小さなバスルームも設えられた部屋で、フリオニールはとりあえず鎧を脱いで軽装になり一度ベッドに横たわった。

「あー、なんか懐かしいなこの感覚。最近ずっとテント暮らしだったからな」
「ああ、たまには悪くない」

隣のベッドに腰掛けていたクラウドだったが、一度窓の外に目をやると立ち上がりドアの方へと足を向ける。

「ちょっと出てくる」
「出てくるって、どこへ?」
「…気にするな」

そのままドアを開けて部屋を出て行くクラウド…まぁ、何か考えがあってのことだろうと思ってフリオニールはベッドから身体を起こしバスルームへと向かった。
一体どこから湯を引き込んでいるのかは分からないが、それでも湯船に身体を浸すと日ごろの戦いで溜まった疲れが洗い落とされるような気がしてフリオニールはひとつ息を吐いた。
それにしてもクラウドはどこへ行ったのだろうか…ぼんやりとそんなことを考えはするものの、彼に個人行動が多いのは今に始まった話ではない。
そんな考えは湯に浸っているうちに消え去り、フリオニールの身体からは疲れがゆっくりと解され落とされてゆく。
どれほどそうして湯に浸っていたかは自分でもはっきりは思い出せないが、身体がふやける前にと湯船から上がり、そのまま軽く体の水気をふき取る。
少し上せたのか、ひんやりとした空気が心地よくて…フリオニールは用意されていた寝間着のズボンだけを履き、上半身裸のまま窓際に歩み寄る。
窓の外は、いつものメルモンド湿原らしくしとしとと雨が降り続いている。
明日もまた雨だろうか、そんなことを考えていたフリオニールの耳に聞こえてきたのは…鍵が開けられ、そしてドアが開く音。

「お帰り、クラウド…って、え、ええ?」

言葉にしかけて振り返って、そこにいたのが想像とは違う人物であったことでフリオニールの動きが止まる。
そう、そりゃあクラウドは部屋に鍵をかけて出て行ったのだから鍵を開けて入ってくればクラウドが帰って来たものだと思うのは当然である。
だから、そこからフリオニールの言葉は続かない。

「…なんて格好してるんだ、お前は」

口をあんぐり開いたままのフリオニールの、その姿と表情を見て苦笑いを浮かべているライトニング…聞きたいことは沢山あるのに、その状況が理解できなくてフリオニールからは言葉が出てこない。
それを察したのかライトニングは自分から口を開いた。

「私とティファが同室だったのには気付いていたか?」

フリオニールはぶんぶんと首を横に振る。それがともすれば大げさに見えたのかもしれない、ライトニングは小さく笑みを零す。
そして、そのままつかつかと足を進めて先ほどクラウドが腰掛けていた方のベッドに腰掛けて足を組む。

「その部屋に先ほどクラウドが訪ねて来た。それで『邪魔なら外そうか』と言うと無言でこの部屋の鍵を渡された…と言うわけだ」
「…まさか、クラウドの奴それで…」

なるほど、そう考えれば全てが納得行く。
クラウドが自分から同室がいいと申し出たのは恐らく、ティファとライトニングが同室になったことに気付いたからだろう。
自分がティファの元を訪ねていけばライトニングは恐らく外に出ようかと申し出る、そうなったらライトニングを自分の代わりにこの部屋に戻せばいい…そう言う算段だったと言うことか。

「恐らくはそう言うことだろうな」
「確かに、男女で同室なんてあの人が許すわけがないしな…」

自分が放った言葉でライトニングも同じようにウォーリアオブライトの顔を思い出したのか小さく笑みを浮かべる。

「だが、私はクラウドに感謝している」
「…ライト、それどういう意味、って言うか…そう言う意味、だよな…?」

流石に今のライトニングの言葉が意図しているものが分からないと言うことはない…いくらなんでもこの問いかけは間が抜けすぎていやしないだろうかと、言ってしまった後で思った。
しかしライトニングはその間の抜けた質問に対して笑顔を向ける…その笑顔がフリオニールの目にはとても妖艶な物に映って、別にこんな状況になるのが初めてというわけでもないのにフリオニールの胸が不意に高鳴る。

「とりあえず、私も風呂に入ってくる…覗くなよ」
「の、覗かないよ」

慌てたようにバスルームから目を逸らして再びフリオニールの視線は窓の外へ。
小さく笑う声が背後で聞こえて、そのまま足音はバスルームの方へ消えた。

「…と、言うことは…つまり、朝まで…ライトと2人…」

ゴクッ…と喉が鳴る。今までこんな状況があっただろうか?
肌を重ねたことがないわけじゃないが、普段はもっと余裕がないというか、夜中にテントを抜け出して他の仲間に見つかる前にすることだけしてそのままテントに戻るなんて事ばかりで。
それすらもここ数日は上手く2人になれる場所が見つからなかったり、タイミングが合わなかったりで。
それが誰にも見つかる心配もなく、誰にも邪魔されることなく朝まで2人きり。その状況に、いやがうえにもフリオニールの期待は高まってしまう。
…バスルームのドア越しに聞こえるかすかな水音さえも、今のフリオニールの心に火をつけるには充分すぎて―なんだか落ち着かなくて部屋の中をうろうろと歩き回る。
だから、バスルームからフリオニールとは逆に寝間着のシャツだけを纏ったライトニングが出てきた時にはそのフリオニールの落ち着きのなさに随分と驚いていたようだった。


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