セカンド・ヴァージン-1/5-






迫る夕闇から逃れるようにふたりが足を向けたのは―うっすらと記憶に残る廃屋だった。
フリオニールの最後の記憶の中に残る、ライトニングと共に夜を過ごした場所―
戦士達が秩序の聖域に集まるまではまだ時間がある。それまでの時間をふたりで過ごしたいと―我侭を言ったのは、フリオニールだった。

「おかしいよな。ついさっきまで忘れていたはずだったのに―思い出した途端に君と一緒に過ごす時間がどうしても欲しくなって」

身につけた武器を下ろし、身につけた鎧を脱いで衣服だけを身に纏った状態になってから廃屋の壁に凭れるように座りながら苦笑いを浮かべてフリオニールは手を伸ばす。
その手はゆっくりとライトニングによって握り返され、ライトニングはすぐにフリオニールの隣へと足を進めた。
肩に触れるぬくもりがなんだか懐かしくも思えて―フリオニールは腕を伸ばし、そのライトニングの肩をゆっくりと引き寄せた。
それはまるで「あの夜」、熱い時間を過ごした後に寄り添っていた時のように。

「…それにしても、本当にどうして思い出せたんだ」

隣から聞こえる声に視線を移すと、ライトニングの空色の瞳が真っ直ぐに自分を見上げていた―その瞳を真っ直ぐに見返し、答えを探す。
だが、探したところで何かが見つかるわけもない。フリオニールは小さく首を横に振ってみせ、そして言葉を紡いだ。

「俺にも分からない。でも…きっと、俺にとってそれだけライトとのことが大切な記憶だったからってことなんじゃないかな」
「…格好をつけるつもりもなくそう言う言葉を言うところは変わらないな」

返された言葉には苦笑いが混じっている。だがその苦笑いには嫌悪の色は含まれていない―寧ろ、どこか嬉しそうにも聞こえるのはそうであって欲しいというフリオニールの願望がそうさせるのか、それとも。
気付けばふたつの視線は真っ直ぐに向かい合い、互いだけを捉えている。何故この世界にいるのかすら分からないまま、そこに共にある―
この世界に再び喚び戻された理由こそ分からないものの、それでもライトニングがそこにいると言うだけでフリオニールには充分なような気がしていた。


←  Next→




TEXT_DEEP MENU / TEXT MENU / TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -