魔列車で行こう-side/deep- -6/6-
「…このままここで寝ていったらどうだ」
乱れた衣服を直すこともせず、先ほどまで包まっていた毛布にひとりで包まったままベッドから自分を見上げているライトニングに対してフリオニールはゆっくりと首を横に振る。
目を閉じたらすぐにでも眠れそうな程、全身を眠気が支配している…勿論それなりに疲れはあるのだろうが、どうもそれだけではないような気がして。
「朝起きた時に俺がここにいたら色んな意味で多分他の仲間が黙ってないだろ?…俺だってもっとライトと一緒にいたいけど、起きてられる自信がない」
「まあそうだな…私ももう眠い…」
普段のライトニングらしくもなく、既に目をとろんとさせながら半分寝ぼけているような声で呟いたライトニングを見ていると、どうやらそれは彼女も同じらしかった。
「…そんなに激しくしたつもりはないんだけどな」
「何を言い出すんだ…この馬鹿…」
普段とは違う、何だか可愛らしくも見えるライトニングを見ているとついつい頬が緩むのを止めることが出来ない。
名残惜しいという気持ちはありながらも、フリオニールはライトニングの髪を緩々と撫でてからベッドを離れた。
そもそもここにやってきたのは、冷えた身体を温める為で―温めるどころか火照るほど熱くなったことを考えれば、最初の目的は充分に果たされているわけで。
「おやすみ、ライト」
その言葉に、返事は返ってこなかった。
かわりに聞こえたのは規則正しい寝息…余程眠かったのだろう、フリオニールはライトニングを起こさないように、静かに個室の扉を開くと通路へと出て他の仲間のいるはずの客車へと向かっていた。
フリオニールももう、あまり起きていられそうにない…列車の揺れに途中ふらつきながらも客車に戻ると、他の仲間達も皆眠っているようだった。
ジタンやバッツ、ラグナなどはカードを握り締めたままうとうとしている。大人しく寝ればいいのに…などと思いながらフリオニールは座席に腰掛けると、もはや抗うことすら出来ないほどの眠気に大人しく誘われるようにゆっくりと目を閉じた―