甘い響きにいざなわれ-1/5-






ひずみの解放に向かう時、彼らは普段はひずみの近くまで全員で移動し、その近くにテントを張って野営を行うことが多い。
だがその日はそう言うわけにも行かず…前の日にひずみで怪我をした仲間がいたこと、そしてポーションを切らしていたことから野営地を動かさないということになった。
普段であればひずみの解放にどれほど時間がかかっても、近くに野営地があることを知っているからそこまで帰ればいいだけの話なのだがその日はそう言うわけにも行かず。

「だからって毛布だけ手渡して、帰って来れそうになかったら適当に野宿しろって…あの人も時々無茶言うよなぁ」

どうにかひずみから抜け出してきた時には日もとっぷりと暮れていて、今から歩いて野営地に戻るとなると下手をすれば夜明けの方が近い時間帯になるかもしれない。
結局、ウォーリアオブライトに言われたとおりにひずみの近くで野宿するしかないわけで…焚き火の炎を見つめながらフリオニールは苦笑いを浮かべた。
運良く、ある程度建物の形は残した廃墟を見つけたのでそこで夜を明かすことにした一行は建物の外に火を熾し、軽く食事を取ってから束の間の休息をとっていたのだった。

「それにしても、時間はかかっても4人だけでどうにかなる場所でよかった」

焚き火で湯を沸かして入れた茶を飲みながらライトニングが小さく呟き、その言葉に一行はそれぞれに大きく頷いていた。
今日、ひずみの解放に挑んだのはフリオニールとライトニング、それにクラウドとティファ…

「皆ほんと、変な気ばっかり回すんだから…私ジタンに言われたの、『折角のダブルデートの邪魔しちゃ悪い』って」
「そんな呑気な話でもないんだけどなぁ」

ライトニングと同じように茶を啜りながらフリオニールが苦笑いを浮かべ、クラウドは小さく頷いている。
静けさに支配される空間で焚き火にくべた薪がぱちりと爆ぜ、その音に気づいたところで自分たちのいるこの場所が静寂に支配されていることに気がつく―

「まぁ、無事に終わってから考えてみたらたまにはこういうのもいいかなぁって思うけど。ね、クラウド」
「…そうだな」

そんなことを言い合っているクラウドとティファは肩の辺りが触れ合う程度の距離で寄り添っている。
他の仲間達といる時はここまでぴったりと寄り添う姿をあまり見ないが、気心も知れていてある程度の事情も分かっているフリオニールとライトニングの前だからか若干遠慮がないようにも感じた。
無論遠慮して欲しいなどと思っているわけでもないが…その様子を見ているフリオニールとライトニングはついつい、互いの顔を見合わせて苦笑いを交し合ったのだった。

暫くはそうやって焚き火を囲み、他愛もない話をしていた4人であったが…そろそろ夜も更けてくる。
一瞬だけ建物の方に視線を送ったフリオニールは、既に小さくなりかけている焚き火の方へ…そして、その焚き火を囲む仲間達に向けて視線を静かに動かしていく。

「ところでさ…さっき見て回った感じだと、壁とか天井とかがしっかりしてて使えそうな部屋が2つしかなかったんだ。で、部屋割りなんだけど」
「…分かってる。ライトと同じ部屋がいいんでしょ?」

自分が言おうとしたことをあっさりとティファに見抜かれて、フリオニールはただ赤面するしかなかった。
その様子を見て、ティファはくすくすと笑みを浮かべクラウドは表情には出さないがしっかりと頷いている。

「と言うかお前達もその方が都合がいいんじゃないのか?」
「まあ…な」

ライトニングの問いかけにはクラウドが短く言葉を返し、それで4人は再び互いの表情を窺いあってからひとつ頷きあう。
考えていることは結局、4人とも同じだったということで…フリオニールはひとりだけ自分が赤面していることが違う意味で恥ずかしく思えてならなかった。


←  Next→




TEXT_DEEP MENU / TEXT MENU / TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -