水月の夜-4/4-
「…ライト、脚…前に伸ばして」
途切れ途切れの声でそう言うフリオニールの言うがまま、ライトニングは膝を折って後ろに回していた脚を前方に伸ばす。
それを確かめると、フリオニールは繋がり合ったままその脚を掴んで引き寄せて上体を起こし、そのままライトニングの肩を押して押し倒すとその上に覆いかぶさった。
知ってはいたがこういうときに不意に見せるたくましさにライトニングの鼓動が早まる。それは交わっていることから来るのとはまた違った理由で―早まったと言うより高鳴ったと言う方が正しいのかもしれない。
「最後は…俺に任せてくれるか?」
「…っ、ああ…」
ライトニングの答えを聞くや否やフリオニールは先ほどライトニングがそうしていたよりも早く力強い動きで腰を動かし始める。
腕を掴んでいた手はライトニングの掌を捉え、いつしかしっかりと指が絡められている。
先ほど見せた力強さと、そして真剣な眼差しに射抜かれたかのようにライトニングはフリオニールから目が離せない。
身奥に感じる快楽と、目の前の愛しい姿がひとつに重なってライトニングの心をきつく掴んで離さない―
「そろそろ、出そう…」
「ん…!」
フリオニールの呟いた言葉に許可を与えるように背中に回した腕の力を強めると動きがいっそう激しくなり…そして、
深く貫いた一瞬にライトニングは身体の奥で何かが弾けるのを感じる―
それと同時にフリオニールがゆっくりと倒れこんでくる。ライトニングはそれを受け止めるように抱きしめてその髪をゆるゆると撫でた。
暫くは余韻に浸るようにそのまま抱き合っていた2人だったが、不意にフリオニールが口をひらいた。
「…ダメだ…良すぎて、またあんまり…」
どこかしょぼくれた様子のフリオニールが可笑しくて、ライトニングはくすくすと笑いを浮かべる。
「…笑うなよ」
「いや、馬鹿にしたつもりはない。ただ…その、そんなことを気にする必要はないのにと思って、な」
宥めるように背中を軽く叩き、そしてそのまま唇を触れ合わせる―
離れた唇の端が上がり、再び交わされる笑顔。
そこで互いにひとつ息を吐き、ゆっくりとライトニングの中からフリオニールが引き抜かれてゆく。
そして繋がり合った身体が2人分の身体に戻ると、ライトニングはゆっくりとした手つきではあるが乱された着衣を戻し始めた。
そしてその視線が再び、湖面にゆらゆらと浮かぶ月を捉える。
「…月が綺麗だな」
「ああ…そうだな。もう暫く、月を見てから帰るか?」
自分も着衣の乱れを正すと、フリオニールはライトニングの隣に座ってその肩を抱く。
「ああ。折角だからもう少し一緒にいたい」
「…そう言うこと言われるとうっかりまた襲いそうだよ、俺」
「今日に限った話をすれば襲ったのは私のような気もするがな」
冗談めかしてそんなことを言い合いながら、二人は空にある月と湖面で揺れる月をぼんやりと眺めている。
激しい時間の後に緩やかに流れる優しい時を確かめ合うように、ただ2人は寄り添っていた。