引かない熱と優しさと-1/5-






戦士達は日々、戦いの中に生きている。
仕えるべき神はなくとも、元の世界へ還る為の術を探すべくひずみを解放する彼らに襲い来るイミテーション。ただの人形ではなく、時に自分たちの力を遥かに凌駕する敵との戦いを余儀なくされることがある。
そのこと自体を、彼らは厭うわけではない。戦うことによって、自分たちの進むべき道を探す―その宿命を、誰もが受け容れている。
それは勿論フリオニールとライトニングも例外ではなく、彼らもまたそれぞれがひとりの戦士として日々戦いの中に身を置いている―だが、戦うということは時に、人には制御できない「感情」を呼び起こすことがままあって。

「…フリオニール」

ともにひずみの解放に加わり、今日もまた…自分達の力を超えるイミテーションとの戦いを乗り越え仲間達の待つ野営地へ戻りかけたところでライトニングがフリオニールのマントの裾を掴む。
仲間達は既に野営地へと向かっており、最後尾を歩いていた2人のその様子に気づいた者はない―ただ、実際にマントを掴まれたフリオニールだけがライトニングのその呼びかけに気づき、上体だけ振り返ってライトニングを真っ直ぐに見据えた。

「どうしたんだ?」
「…熱が…引かないんだ」
「熱?大丈夫か?」

ライトニングの言葉に、フリオニールはその額に掌を当てる―大きなその掌は今のライトニングは冷たくて心地よくて、でも…それだけでは足りない、と心の奥底でそう叫んでいる自分に気づかされて。

「そうじゃない…」
「え、でも熱って」

どこか戸惑っているようにすら見えるフリオニールがこんな時は妙にもどかしく思えて仕方がない。その純粋ささえも彼の魅力だということくらい充分に分かっているのに、それでも今の自分を襲う「熱」の正体を一言で理解してくれないことが何故だか妙に神経を引っかいて…
―誰が言っていたのかはもう覚えていない、だがライトニングはそんな話を聞いたことがあった。戦いの中で生まれる高揚感、それを人は全く違う感情と―性的な欲求と錯覚してしまうことがあるのだ、と。
そう、この感覚は錯覚に過ぎない。それは頭では分かっているのにそれでもライトニングの中に芽生えた熱は醒めることを知らなくて―
マントを掴んだままの手を一度離し、その手はフリオニールの背中へ。そして、その鍛えられた身体に全てを預けるかのようにぎゅっと抱きつく…
その瞬間にフリオニールが身体を強張らせる。それはそうだろう、先に行った仲間達がいつ戻ってくるか分からないこの状況でのライトニングのその行動にフリオニールが驚くのはある意味無理のないことなのかもしれなかった―
だがそれでも、ライトニングの中に生まれた欲求は消えることを知らないまま。

「…お前が、欲しいんだ」
「え、ちょっと…急に何を…」
「誰も今すぐにとは言っていない。だが…」

ライトニングは素早く周囲に視線を走らせ、周りに仲間がいないことを確かめると微かに爪先立ち、素早くフリオニールの唇を奪う―勿論、口付けくらいで納まる熱ではないことはライトニング自身が一番良く分かってはいるのだが、それでもほんの少しでもフリオニールに触れていたくて。
唇を奪われた側のフリオニールは躊躇いがちな様子ながらもライトニングの背中に腕を回し、緩くその身体を抱きしめる。

「…もしかして、さ」
「ん?」
「戦ってると妙に気分が高揚して…そのはけ口がどうしても見つからないことが俺にも時々ある、んだけど…もしかして、ライトもそう言う…」

自分の今の状況をフリオニールが漸く理解したのか、ライトニングはこくりと頷いてみせる…途端にフリオニールの頬に紅みが差し、そしてすぐに気まずそうにライトニングから目を逸らした。
その表情の意味が理解できずライトニングがフリオニールの顔を真っ直ぐに見据えたのと、フリオニールが困ったようにぼそぼそと言葉を繋いだのがほぼ同時。

「いや、その…俺はそう言うとき、自分でどうにかしちゃうことが多いんだけどその、今一瞬ライトのそんな姿を想像しちゃって…」
「…妙なものを想像するんじゃない、それと…自分でどうにかするんじゃなくてそう言うときは私に言えばいい」

溜め息をつきながらライトニングはフリオニールから身体を離し、それでも未だ熱の籠もった視線でフリオニールを見上げながら微笑みを浮かべてみせる。
相変わらず気まずそうなフリオニールも照れた様に頬を掻きながらライトニングを見つめ、こくりと頷くと…何の迷いもなくライトニングの手を取った。

「あんまり長い時間戻らないと怪しまれるから…今はちょっとだけ、な」

しっかりと手を握り、指を絡め合わせるだけで…身体の中で蠢き回る熱がまた強くなったのを感じて、どうしようもなくフリオニールが愛しくなって。
ライトニングの手を引くその力強さに微笑みを浮かべながら、フリオニールの後に続いてライトニングは歩き始めた。


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