御伽噺に出来ない恋-6/6-
「ライトはさ、俺たちのことを…恋物語としては上出来だって言ったけど」
「ああ…それがどうした?」
「ここまで赤裸々な恋物語に夢を見る女の子はいないんじゃないかなあ、なんて思った」
フリオニールの肩に頭を預けながら、言葉を返さずにくすくすと笑う。その笑いがその言葉への肯定のしるし。
「だが、他の誰に夢を見られることのない物語だとしても…私にとっては何より大切なものだからな。お前のことも、お前と過ごす時間も」
返されたライトニングの言葉がフリオニールの心を掴んで離さない。
やはり自分ははっきりとライトニングを愛していると心の底から思い知らされる―なんだか離れがたくて、フリオニールはライトニングの頬に手を添えるともう一度軽く唇を触れ合わせた。
「…そろそろ戻らないといけない、かな」
「ああ…流石にあまり姿を消していると怪しまれるだろうから」
立ち上がる刹那小さくよろめいたライトニングの腕を掴み、大丈夫だと短く呟かれた言葉を確かめてフリオニールは扉に近づき…閂の代わりに突き刺しておいた槍を引き抜いて鍵を開ける。
扉の向こうに誰かいやしないかと確かめ、そこに仲間の姿がなかったことに安堵の息を漏らしながら通路へと出て、ライトニングに向かって手招きをした。
ライトニングが自分同様通路へ出てきたのを確認し、何事もなかったかのように表情を取り繕うとフリオニールは仲間達の声がするほうへと歩き始めた。
余談。
「フリオニール」
散々劇場艇の探索を楽しんだ一行が、同行しなかったウォーリアオブライトやクラウドの待つ野営地へ戻っていく道すがら…背後からスコールが一言。
「ん?」
「…もう少し上手く隠れた方がいいと思うぞ。ラグナは気づいてないようだったが」
それだけ言ってすたすたと歩いていったスコールの背中に…彼が言いたかったことを察してフリオニールは視線を彷徨わせる。
スコールにはどうやら気づかれてしまっていたらしい…スコールはそれを敢えてライトニングに言うようなことはしないと思うし自分に話したのも同性だからと言うことはあるだろうが―もしもこのことがライトニングに知れたら今度は何を言われるだろう、とフリオニールの背中を冷や汗が伝うのであった。