激情の仮面-1/6-






何故今自分がこんな状況にいるのか、ライトニングには理解できない。
理解できないのは自分の状況だけでなく、目の前にいるフリオニールのことも。

身体を重ねたことなんてもう数え切れないほどあるが、大抵一緒にいる間に互いに気分が高まり、触れ合っているうちに自然とそう言う流れになるのがいつもの話。
しかし今日は違った…床と壁くらいしか残されていない、それでもかろうじて人の来ることはなさそうな廃墟の奥深くに強引に腕を引かれて連れてこられたかと思うと、壁に強引に肩を押し付けられていきなり唇を奪われた。

「ん…!」

いつものフリオニールらしくない、優しさの欠片もない…ただ奪うだけの乱暴な口付け。
躊躇っているうちにねじ込まれる舌は文字通りライトニングの口腔内を犯すように蠢き…戸惑いの中でも、自然と身体の力が抜けていくのが分かる。
やめろとフリオニールの身体を押しのけるのは簡単だった、だが―今のライトニングにはもうそんなことはできない。
攻撃的にすら感じるその口付けが、それでも的確にライトニングの中に官能の炎を点し始めていたから…もう逃げられないのは、自分が一番よく分かっている。
ライトニングの側に抵抗する気がないことに気づいたのか、フリオニールの左手はライトニングの肩を壁に押し当てたまま右手で器用にライトニングの身につけたベルトを外し始めた。
ものの数秒もかからずにベルトは解かれてライトニングの足元へ。
その間も乱暴な口付けは止まることがない。フリオニールの舌はライトニングの歯列をなぞり、ライトニングが無意識に差し出した舌を貪るように絡め合わせている。
アウターの留め具も片手だけで器用に外すと片手だけでするりと脱がされベルトと同じように足元へと落ちる―そこまでをいとも容易くやってのけたフリオニールの手はすぐにインナーのジッパーにかかる。
いとも容易く開かれてライトニングの素肌は露わにされ、躊躇いなど全くないと言うかの如くにその手はライトニングの下着をずらした。
あっさりと曝け出された胸を、先ほどまで服を脱がせる為だけに使われていた指先が撫でる。そのまま指先は胸の頂へとたどり着き、突起を緩く撫でたかと思うとその指先がきつく捻り上げた。
痛い、と声を出そうにも唇は塞がれたまま。そこで我に返ったかのようにライトニングはフリオニールの右腕を掌で叩いた。
そのまま、右手でフリオニールの身体を押し返す…絡み合っていた唇は離れ、そこで漸く見えたフリオニールの表情が―怒りに彩られているのを確かめたライトニングの口から、抗議の言葉は出なかった。
怒っている。フリオニールが。…何故?

「…大人しくしてるんだ、ライト」

その瞬間が反逆のチャンスだったはずなのに、普段自分に向けられることのないフリオニールの怒りの表情に気を取られているうちに先ほどまで肩を押さえつけていた左手に両の手首をつかまれる。
掴まれた手首はライトニングの頭の上の壁に押し付けられ、ライトニングの両手の自由は完全に奪われてしまう…
その力は強くて、両手の自由が奪われたと同時にライトニングは完全に動きを封じられる形になってしまって。

「フリオニール、どうして…」

ライトニングのその問いかけに答えは返ってこない。
答えを返すべき唇はライトニングの首筋に吸い付き、痛みと共にライトニングの身体には紅い痣が残される―
痕を残されるのは嫌いではない、その時の痛みだって耐え切れない程のものではない。だが、今の…些か自分勝手にすら見えるフリオニールの様子を見ているとライトニングの中には微かとは言いがたい不安が芽生えてきていた。
しかしそんなライトニングの心中など知ったことではないのであろうフリオニールはそのまま唇を滑らせて時折吸い付いてあちらこちらに痕を残す。
思うさま紅を刻みつけ、気が済んだのか唇を離すとライトニングの胸元に舌を這わせ―何の迷いもなく、突起を口に含む。
吸い上げられ、舌先で舐め転がし、時に甘噛みされるその感覚に再びライトニングの思考は蕩け始めていて。

「もう、やめ…っ、あ…」

声が漏れるのが止められない。いつもの優しさは欠片も感じられないのに、それでもどうすればライトニングが悦ぶのかしっかりと理解しているフリオニールの愛撫はしっかりとライトニングの身体に甘い痺れをもたらしてゆく。
ライトニングの両手首を押さえている左手は相変わらず、右手はライトニングの素肌を撫でながら…くびれた腰のラインをなぞり腹部を滑って次第に下のほうへと下がっていく。
ただ、素肌を撫でられているだけ。たったそれだけなのにじわじわとライトニングの中を走る快感の電流は強くなっていく。
まるで弄ばれているような錯覚と―それでも今のフリオニールに逆らえない、確実にフリオニールを求めている本能の狭間で揺れ動きながらライトニングの中に迸る快楽。


←  Next→




TEXT_DEEP MENU / TEXT MENU / TOP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -