水月の夜-2/4-






「ごめん、遅くなった」

月だけが映った水面を眺めていたライトニングだったが、その声に振り返るとそこにはフリオニールの姿があった。
ここに来る前には既に寛いでいたのか普段身を包んでいる軽鎧はその身体にはなく、戦いのときではない時間をこれから共に過ごすと言うことをふと実感してライトニングはほんの少しだけ嬉しくなった。

「気にするな。抜け出すのは面倒だっただろうし」

事情を解っているユウナや解っていないにしても理解はあるらしきティナを置いて出てくる自分と、事情を解っていてそれでいてからかいの言葉を投げてくるであろう男性陣を残してくるフリオニールでは状況が違うことは重々解っている。
だからこそ遅くなったことを責めるつもりは全くなく…それでも、少しでも側にいたいという気持ちが勝ってかライトニングは立ち上がりフリオニールの近くまで歩み寄った。
それを迎え入れるようにフリオニールは腕を伸ばし、ライトニングの右手をぎゅっと掴む。
繋ぎ合わされた手に照れくさそうに笑うフリオニールを見ながら自然とライトニングにも笑顔が浮かんでいた。

「ああ。ジタンに『デートだろ』って言われて、セシルが『ライトによろしく』って」
「ジタンはともかく、セシルは悪気があるように思えないのが難しいところだな」

手をつなぎあったまま湖の近くまで移動し、そのほとりに並んで座る。
厳しい戦いの最中、こうして2人だけで時間を過ごすことが2人にとっては一番の癒しとなっているのであった。
戦いの中では甘い言葉を掛け合うこともこうして触れ合うこともなかなか出来ないが、だからこそ他のものにとっての休息の時間にこうして2人で共に過ごすことくらいは許されてもいいのではないか―ライトニングはそう思いながらフリオニールの肩に頭を凭れさせた。

「そっちはどうだ?何も言われなかったのか?」
「ティナは気をつけて行って来い、と言っていたな。ユウナはもう寝ているけど気にするなと。ティファは私よりも先にテントを抜け出していた」
「クラウドもなかなかやるな」

フリオニールがしみじみと呟き、それが可笑しくてライトニングの口の端には笑みが浮かぶ。
夜中にテントを抜け出すとなると目的は自分たちと同じだろう、と言うことがなんとなく解ったのであろうか。

「と言うより、不思議なことがひとつあるのだが…『あの』クラウドがティファに対して愛を囁いているところが私にはどうも想像できない」
「物凄く言いにくいんだけどそれさ…ラグナから同じことを言われたことがある。ライトが好きだの愛してるだの言ってるところがどうも想像つかないって」

走る沈黙。
先に笑い出したのはどちらだったか、自分たちにもよく解らない。だが2人は同じように声を上げて笑いをこぼす。

「私はクラウドほど無愛想ではないつもりだが」
「まあまあ、確かに俺も最初は想像できなかったからな。しかもそれを言われる相手が俺になるなんて」

何かに想いを馳せるようにフリオニールの視線がライトニングから外れ、その瞳が月を映す湖を捉えているのが解る。
何を思い出しているのだろうか―ライトニングにはそれは想像がつかない。
しかし、どこか自分に自信がないようにすら感じられる彼のことだ。こうして想いが通じ合うことになるなどと思ってもみなかったのであろう。
さまざま話した中で、彼自身の記憶の中では恋愛関係の経験は本当に希薄であったように感じられる―無論、彼が元の世界にいたときにその仲間には随分親しくしていた女性がいたようではあるが、フリオニール本人が「親しかったのは仲間としてだけであって本当に何もなかった」と言うのだから今それを疑うことはしたくない。

「…他の誰が想像できなかろうと、お前だけが知っていればそれでいい話だからな」

フリオニールの肩にもたれていた体勢から一度起き上がり、ライトニングは膝を伸ばして座っているフリオニールの太股あたりを跨いで座りなおす。
向かい合った姿勢になったところで真っ直ぐにその瞳を見据え、何のためらいもなく口を開いた。

「愛している」
「俺も…愛してるよ、ライト」

言葉と同時にぶつかった視線が弾け、引き寄せられるように唇が重なる―
初めて身体を重ねた時にはぎこちなく合わされていただけの口付けは、共に過ごす時が増えるに伴って解り始めたことがあるのかそれが当然であるように少しずつ深くなっていく。
フリオニールの左腕はライトニングの背中に回されてはいるものの右手はゆるゆるとその胸元を這いはじめているし、太股に跨っているからこそ気付くのだが服の下では既に彼自身がライトニングを求めて自己主張を始めている。
そしてライトニング自身の中にも…口付けを起爆剤のようにして目覚め始める官能の熱。
…確かに野営地から離れた場所を逢引の場所に選んだのは「それ」が目的ではあったのだが…自分もフリオニールもあまりにも解りやすすぎはしないだろうか、などとライトニングはぼんやり考えていた。
その間も唇は離れることなく絡み合い、そライトニングはインナーのジッパーを下ろす。
誘われるようにフリオニールの手が滑り込んで、小ぶりではあるが確かな柔らかさを持った膨らみを掌で包むように弄ぶ―
与えられる快感に、ライトニングの思考は少しずつ蕩け始める。そしてそれはまた、目の前のフリオニールも同じ。


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