くちびるに愛を乗せ-3/6-






「また何か悩んでいるな」

そんな状況で悩みの対象張本人の声が背後から聞こえたものだからフリオニールは驚きのあまりのけぞり、そのままバランスを崩して尻餅をついた。
見上げればライトニングが腕組みをしたままこちらを見ていて、フリオニールは何をどう言葉にしたものかと考え…結局言葉が出ないまま、口をぱくぱくと動かしている。

「スコールがお前の様子がおかしいというから来てみたが案の定、か。で、今日は一体何を思い悩んでいる」
「…あのお節介」

無愛想だし他人に興味なさそうな素振りを見せておきながら変なところで気を使う…確かにスコールはそう言う男だし、別にそれが悪いわけでもない。
だができればこの件はライトニングには話さずにいた方が良かったのかも知れない…フリオニールは心の中だけでそう考えていた。
だって、実際ライトニングに自分が悩んでいることを悟られたら…もう言い逃れはできないことは充分によく知っていた、から。

「その顔を見ると、誤魔化そうとしても無駄だというのはわかっているようだな」

どうやらその考えはしっかり表情に出ていたらしく、ライトニングは尻餅をついたフリオニールに手を伸ばし…フリオニールは当たり前のようにその手を取って立ち上がる。
無意識に視線がライトニングの唇を捉え…ぶんぶんと首を横に振った。
誤魔化しきれるわけはない。でも、言えない。だけど、やっぱり逃げ切れるわけはない。

「何か言いたいことがあるならはっきり言ったらどうだ」
「…話すのは構わないけど…俺を、軽蔑しないか?」
「私としては、お前が私に軽蔑されるかもしれないと思うような悩みの内容が逆に気になるわけだが」

やはり、誤魔化すことはできない…覚悟を決めたフリオニールは、言葉を選ぶように先ほどスコールに話したことと、そして…具体的に自分が「目撃したもの」を話し始める。
スコールにも話した内容の部分では黙って聞いていたライトニングではあったが、「目撃した内容」を聞いたときには流石に表情が変わる。
言うべきではなかったのかもしれない、だけど自分を誤魔化すことはできない…迷いと葛藤を繰り広げながら、それでもフリオニールは全てをライトニングに打ち明けたのであった。
ただ、それでもやはり…興味がある、とまでは口にはできなかった。
それを言ってしまうと本当にライトニングに軽蔑されそうな気がして。
そんなフリオニールの言うことの全てを黙って聞いていたライトニングであったが、不意にフリオニールの目を真っ直ぐに見上げる。

「…皆がテントに入るにはまだ早いな…じゃあ、1時間後にここで」
「…え?」

ライトニングが出した結論に対して、フリオニールの口からはそんな言葉しか漏れてこない。

「1時間後にここで、と言ったんだ。今野営地を離れると、まだテントの外にいる連中に見つかる可能性があるだろう」
「って言うかライト、それって…」
「試してみたいんだろう?」

そこでライトニングが唇を舐めたのは偶然なのか、それとも…
フリオニールは小さく唾を飲み、そしてあとはただ頷くことしかできないのであった。
頷いたのを確認したようにライトニングは踵を返す…が、フリオニールに背中を向けたまま一言だけ告げる。

「それと、その程度のことでお前を軽蔑できるほどお前への愛情が浅いつもりはないから心配するな」

そしてライトニングは颯爽と歩いて去ってしまった。…フリオニールが悩んでいたことが馬鹿馬鹿しくなるほどに。
フリオニールはただただそんなライトニングの背中を見送ることしかできなかったが、それでも…怪しまれないように一度テントに戻らなければならないと思い立ち、そのままライトニングを追う様に仲間達のもとへ戻っていった。


…ライトニングの言うとおり、テントは張られているもののまだテントに戻るものはなく…ウォーリアオブライトがいつものように「そろそろ就寝の時間とする」と言って回ったのが先ほどの会話からもうすぐ1時間経つかどうかと言う頃。
フリオニールは一旦空いているテントに入る…同じテントにいたのはカインとティーダ、それにスコール。
この顔ぶれならばある程度事情は分かってくれるだろうし自分がテントを抜け出したとしても深く追求されることはあるまい。
実際、ライトニングと約束があるときにウォーリアオブライトと同じテントになると抜け出すのが大変なんだ…と余計なことを考えながらもフリオニールは一応スコールにだけ聞こえるように小声で伝えたのであった。

「正直今、お節介って怒ったほうがいいのかありがとうって礼言った方がいいのか自分でも分からない」
「…お前の好きにしろ」

スコールの言葉はいつものごとく短くはあったが、その言葉だけで自分とライトニングの間で交わされた会話についてはある程度理解してくれた…ようだった。
そのせいか、それから鎧を脱いで武器を置いた段階で出かけてくると言い出しても誰も何も言わない…ティーダには若干からかわれはしたもののこれはまあいつものことだし、ティーダのほうも気心が知れていてどこまでならフリオニールが嫌がらないかをしっかり理解しているのでその点は特に気になるわけではない。
いつもに比べてあっさりとテントを抜け出したフリオニールは、先ほどライトニングと話していた場所まで向かう…ライトニングは既にそこにいて、フリオニールの到着をじっと待っていたようだった。


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