くちびるに愛を乗せ-1/6-






ある日の夕食後。
そろそろ就寝時間だとウォーリアオブライトが声をかけるまでは皆好き勝手に行動していることが多いのだがその日そこには珍しい組み合わせの2人がいた。

「…で、俺にしか話せないって言うのは何なんだ」
「スコールにとってはくだらないかもしれないけど…ちょっとその、俺にとってはくだらないの一言で片付けられないんだ…えーと」

なにやら話しづらそうにしているフリオニールに、さっさと話せばいいのにと思いながらその話を待っているスコール。
スコールはバッツやジタンと一緒にいることが多いし、フリオニールは大概ライトニングか、そうでなければティーダやセシルと一緒にいる。
なのでこの2人が一緒にいるというだけで周囲の人間からすれば珍しいことなのではあるが、当の本人たちはそんなことを気にしている様子もなく。
と言うより、フリオニールにはその余裕すらなさそうな雰囲気すらあって。

「もっと手短に話せないのか。えーととかそのとかは要らない」
「ああ、すまない。…で、その…」
「だからだな…」

スコールは大きく息を吐いて頭に手をやる。さっきからずっとフリオニールがこの調子なのだから頭を抱えたくなるのも無理はない。
しかしどうにもフリオニールの話は進まない。スコールの目にはどう切り出していいのか悩んでいるようにすら見える―
その動揺は深いらしく、話は結局遅々として進まない。

「俺にしか話せないのに俺にすら話せないんじゃどうにもならないだろう」
「分かってるんだけどこう、どう言えばいいんだろう…とにかく俺、見ちゃった…んだ」
「見ちゃったって何を」
「…皇帝が…」

皇帝、の名前にスコールの眉根が一瞬寄る。
皇帝はフリオニールにとっては宿敵とも言える相手で、先の戦いの時には自分たちにも随分と馬鹿にした発言をしてくれたような記憶がスコールにもある。
そう言った嫌悪感もないではないのだが、しかしながら…今更フリオニールが皇帝の何を見てこんなに動揺するというのだろうか…
話の続きを促すようにフリオニールの顔を見たスコールがその次に聞いたのは、ただの短い単語の羅列。

「…皇帝が、アルティミシアと…その、なんていうか…真っ最中だったって言うか…」
「ちょっと待て。何でそれを俺に話した」

単語の羅列でありながらはっきりと意味を成したその発言にスコールは最後まで言わせずにそこで発言を止める。
発言を止められたほうのフリオニールはスコールの肩を両手でしっかりと掴む。どうやら言葉にしたことで余計動揺が深まってしまったようだ。

「いくら今は既に敵対してるわけじゃないとは言え、皇帝は俺にとってはやっぱり敵なんだぞ!?それがあんな姿見たら…!」
「答えになってないだろう、俺が聞いたのは何でそれを俺に話したのかってことだ」
「それはだって、スコールなら俺の気持ち分かってくれるかなって思ったから!!」

勿論、言いたいことは分からないではない。
皇帝がフリオニールにとって宿敵であるのと同様に、アルティミシアはスコールにとってはやはり宿敵なのだから…フリオニールが自分が目撃してしまったものを打ち明ける相手としてスコールを選んだことに何の不思議もない、と言うのは頭では分かる。
それに、スコールだってフリオニールの話を聞いたときに少なからず動揺したのは確かで、フリオニールはどうしてもその動揺を自分の中だけで消化し切れなかったのだろうともなんとなくは分かる。
だが、しかし。

「だからって言われた俺はどうすればいいんだ」
「とりあえず話してはみたけどどうすればいいのかなんて俺にも分からない」

スコールの側はいい加減頭が痛くなり始める頃合だった。
確かに、自分にとっては宿敵の…それも、元いた世界から深い因縁を持った相手の色事を目撃してしまったなんて状況で動揺するなと言うほうが無理な話だし、しかもよりによって目撃してしまったのはフリオニールだ。
彼自身ライトニングと恋仲であるようだし、ふたりとも子供ではないのだからともすれば既に深い仲になっているのかもしれないが…そうだとしても奥手なフリオニールのこと、そんな仲になった女性が過去にいたとは考えられない。
そしてそんなフリオニールが他人の色事に対して免疫があると考える方が無理がある。見てしまっただけで動揺するだろうし、それが宿敵なのだから尚更。
そこまでは理解できる…が、では言われた側のスコールは一体どうすればいいのか。


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