義士から、雷光へ






「愛してるよ、ライト」

こんな台詞を躊躇いもなく口に出来るようになったのはいつからだろうか。フリオニールはふとそんなことを考える。
そもそもが、自分がそんなことを言えるような性格だとも思っていなかった。なんだかこんなことを口にするのは酷く気障で自分には似合わない気がして、それがどうしても気恥ずかしくて。
だが、今日もフリオニールは変わらずにその言葉を口にする。やっぱりほんの少し恥ずかしくて、言葉にした後なんだかライトニングの方を見ることが出来ない、けれど。

「ライト…愛してる」

そしてその度に、幸せそうな表情を浮かべて頷くライトニングを見つめて―フリオニールもまた、強い幸せを噛み締めている。
言葉にするだけでは伝えられそうにないほど、フリオニールの中に溢れる想い。それが欠片でも伝わればいいと、強く強くライトニングの身体を抱きしめる。
言葉だけではなく、フリオニールの全てを賭けて伝えなければならない。
どれだけ言葉にしても、どれだけ触れ合っても、どれだけ身体を重ねても―どんどん溢れ出して来るライトニングへの愛しさが止められなくて、どうにかなってしまいそうで。

「…私は」

甘く激しい時間が過ぎ、身体を駆け回る熱が収まるのを待つ間…フリオニールの腕の中、きつく抱きしめられたままライトニングがぽつりと呟いた。
その言葉の続きを待つかのようにフリオニールはライトニングの髪をゆるゆると撫でる。敢えて自分から何かを言うことはしない―きっとライトニングには何か言いたいことがある、そのくらいのことはフリオニールにだって分かっている。

「お前に相当愛されているんだな」
「急にどうしたんだ」

出てきた言葉はそんなもので、それもごくごく真面目な顔で呟かれるものだから何故かそれが可笑しくてフリオニールは小さく笑う。
笑ったのが気に入らなかったのか、軽くフリオニールを睨みつけるライトニングの視線―それでも本気で怒っているわけではないことくらいはフリオニールにだって分かっている。
はぁ、と小さく息を吐いたライトニングは、そのままそっとフリオニールの背中に腕を回す。そして、先ほどとは違う真面目な表情でその瞳を真っ直ぐに覗き込んでいた。

「フリオニールの行動の全てにそれを感じるんだ。こんなに愛されていいのかと思いたくなるくらい、お前からの愛情を」
「…そりゃ、だって」

先ほどまで考えていたことがそのまま、ライトニングに伝わっていたのだと気づいてフリオニールは不意に嬉しくなる。その衝動に身を任せるようにきつくライトニングの身体を抱きすくめた。
そのまま背中を撫で、ライトニングの耳元に唇を寄せる―いくら言っても足りないほど、溢れそうな想いをもっともっとライトニングに知って欲しかったから。
自分がこんなことを言えるような性格ではなかったことは自分が一番良く分かっている。今でも口にするたびになんだか照れくさいけれど、それでも―

「どう頑張っても全部伝えられないんじゃないかって思う位、俺…ライトのこと、愛してるんだ」
「ああ…知ってる」

冗談めかして呟き、顔を上げたライトニングを真っ直ぐに見つめる―そうしてまた、フリオニールの中に溢れ始める愛しさ。
ずっと一緒にいて、同じ時を過ごしても留まることなく胸の中から湧き上がるライトニングへの愛しさを押しとどめることなどフリオニールに出来るわけがなくて。
だから…なんだか気恥ずかしいけれど、それでも今日もまたフリオニールはこの言葉を伝え続ける。何度言ってもきっと全てを伝えきることなど出来るはずのない想いを欠片でもライトニングに伝えたくて。

「…愛してる、ライト…」







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