時折見せる切ない横顔に
フリオニールだって気づいていないわけではない、時々ライトニングが何かを思うように遠くを見つめていることは。
そのことをずっと気にはしていたが深く追求したところでライトニングが答えるともなんとなく思えなくて…敢えて問い詰めたことはなかった、が。
それでもやはり、こうして…遠くを見ている、どこか切なそうにも見えるその瞳に…フリオニールが一抹の寂しさを覚えるのもまた仕方のない話、で。
今日こそは聞いてみようと思いながら今日もまた聞けないまま、フリオニールはライトニングのその横顔を見つめている。
何を思っているのだろうか。元の世界に残してきた誰かのことなのか、それとも全く違う何かのことなのか。
聞いてしまうことで何か、自分自身が余計な感情を抱え込んでしまう気がして…なんだか、聞き出せないままでいる。でもやっぱり気にならないと言えば嘘になるわけで…
―今日こそは。
フリオニールは意を決して、いつものようにどこか遠くを見つめていたライトニングの背後から声をかけた。
「あ、あのさ…ライト」
「ああ、いたのかフリオニール」
その瞬間、先ほどまでとは違う穏やかな表情に変わるライトニング…なんだかそれだけでまた、話を切り出すことに対して躊躇いを覚えてしまう。
しかしここで引き下がってしまってはまた聞けないままになる―フリオニールは自分にそう言い聞かせ、ライトニングの隣まで足を進めた。
「…ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「どうした?」
「今…俺が来るまで、どんなことを考えてたんだ?」
フリオニールのその問いかけに、ライトニングは小さく首を傾げてみせる。何が言いたいのか本気でわからないとでも言いたそうに。
ここで止めてしまったらきっと、もう聞く機会はなくなる―フリオニールは自分にそう言い聞かせ、更に言葉を畳み掛けた。
「今だけじゃなくてさ…たまにライトが凄く切なそうな表情をしてることがあって…それがずっと、気になってた」
言いながら、ライトニングの様子を窺う―特に表情が変わるでもなく、相変わらず真っ直ぐにフリオニールの方を見つめたまま。
勇気を振り絞ったのに表情が変わらないのがなんだか悔しくて…でもそれ以上の言葉を重ねる気にもならなくて、フリオニールもまたライトニングをじっと見つめている。
「…気にするほどのことでもないんだが」
そこでライトニングは一度視線を外し、そしてフリオニールのほうを真っ直ぐに見上げる。
その表情を彩るのは先ほどまでとは全く違う、どこか妖艶にすら見える笑顔で。
「ただ、単純に…お前に触れたいと思っていた」
「…え?」
返された答えが想像の斜め上にあったせいか、フリオニールの方はそれ以上に言葉が続かない。
一体今の自分がどんな顔をしているのかフリオニールには全く分からないが、ライトニングは穏やかにも妖艶にも見える笑顔を浮かべたままフリオニールの方を真っ直ぐに見つめていた。
「ここ数日、お前は他の仲間と一緒に行動していたりしてあまり2人になれなかっただろう、だから」
その言葉と同時にライトニングの右手がフリオニールの頬に触れ、左手はその背中に回る―
「あの、ライト…?」
「たまにはこうしてお前に触れていないとどうにも…調子が出ないんだ」
言われてみれば確かに、ライトニングがあんな表情を浮かべていた時は確かにこうやって、あまりライトニングと2人でいられる時間が取れなかったときが多かった、気がする。
逆に考えれば、だからこそふとライトニングが気になってそちらを見てみたら切なげな表情を浮かべていてそれが気になったのだから―
こんな言い方をすればライトニングは怒るかもしれないが、分かってみればくだらないこと…
フリオニールはそんなことに対して躊躇いを覚えていた自分自身に対して小さく笑いながら、寄り添ったライトニングの背中に腕を回してその額にそっと口付けていた。