全ての始まりは彼女から






フリオニールはふと思い返すことがある―ライトニングと出会って、一度離れてしまって…再びめぐり会った、それまでの出来事を。
先に好きになったのがどっちだったのかなんてことは今となってはもう分からない。
ただそれでも―通い合うとは思っていなかった、秘めた恋心が通じ合った瞬間のことがどうしても頭から離れない。
多分あの時、ライトニングが自分に「愛してる」と言わなければ…自分からは決して言うことが出来なかったんだろうな、と…幾度思ったか分かりはしない。

「どうした、フリオニール」

遠くに海を眺めながら話していた合間に急にフリオニールが黙り込むものだから、ライトニングは不思議そうな顔でフリオニールを見つめている。
なんでもない、と小さく首を振って、そして…隣に座っていたライトニングの肩をそっと引き寄せる。
急な行動にライトニングは一瞬驚きの表情を浮かべるが、それでも抵抗するわけもなくフリオニールに身を預けた。
こうして寄り添いあいぬくもりを感じあうことが出来るのも、あの時―先にライトニングが言ってくれたから。フリオニールはそんなことを考え、ライトニングの耳元に唇を寄せた。

「あのさ、ライト」
「…ん?」
「………愛してるよ」

そこまでの…確か、イミテーションは泳げるんだろうかとか少なくともこの格好のままフリオニールが泳ぐのは無理だとか、そんな話とはまったく関係なくそう言い出したからだろうか。ライトニングは意表を突かれた様にフリオニールを見つめている。
普段冷静なライトニングがそんな表情を浮かべたと言うことで、フリオニールの中に途端に妙な気恥ずかしさが生まれる―そのまま、誤魔化すように一言。

「…ごめん、驚かせたかな」
「それは…驚くに決まってるだろう、いきなり言い出されたら」

言葉ではそう言いながらもライトニングの表情は穏やかな笑顔で、フリオニールにはそれがとても嬉しくて仕方なくて。
感情をあまり表に出さないライトニングが自分の前ではこうやって、驚いたり笑ったり…強がることを少しでも忘れて自然でいてくれることがフリオニールには無上の喜びのように思えた。

「いきなりって言うか…ふと思ったんだ。あの時、ライトから先に愛してるって言ってくれなかったら俺は多分ずっと言えないままだったんだろうな、って」
「お前の性格を考えれば…確かにそうかもしれないな」
「でも、今なら言えるから…始まりはライトからだったけど、でも今はきちんと愛してるって伝えたいなって思ったんだ」

もしもあの一言がなければ、きっと始まることすらなかったふたりの恋。
それを分かっているからこそ、フリオニールの中には…愛情と共にライトニングへの強い感謝の念が常にある。
あの時切欠をくれたライトニングの言葉に感謝するように、フリオニールは抱き寄せたライトニングのぬくもりを感じながらゆっくりと目を閉じた。







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