「仕方がないだろう、好きになってしまったんだから」






「前から気になってたんスけどね…ライトって、フリオニールのどこがよかったんスか?」

他の仲間が出払っていたりこまごまとした用事を片付けたりしていてたまたまティーダと2人になった時に、不意にそんなことを聞かれ…ライトニングはその質問の意図するところが分からずに首をかしげる。
どう答えたものかと逡巡しているのを見て取ったのか、ティーダの言葉は更に続く。

「あ、別に悪いってワケじゃないんスよ?ただ、ライトからフリオニールがどう見えてるのかなーってなんとなく気になって」
「しかしそう言われてもな」

どこが、と言われて改めて考えてはみたものの、ここだと特定できる何かがあるわけではない。
戦っているときの、ちょっと熱血が過ぎるとさえ思ってしまう部分もそうだし、普段自分に対して時折おろおろしたところを見せるところもそうだ。
子供じみているとは思うけど、などと言いながら夢を語る姿も、時々元いた世界のことを思い出してその表情に哀しみをにじませるところもそう。
仲間達とじゃれ合っているときの子供のような笑顔も、それでいて自分にだけ見せる大人の男の顔も。
イミテーションとの戦いの中傷つき血を流しながらも果敢に立ち向かっていく姿も、結局敗れ去り悔しそうに膝をつく姿さえも全てが愛しくて、どこかひとつと言われても答えられるわけがない―

「どこがと聞かれても数が多すぎて時間がかかるな。あえて言うなら全部としか言いようがないんだが」
「あー、なんつーかその…ごちそうさま、って感じっス」

ティーダはあっさりと言い切ったライトニングから視線を反らして後頭部を掻いていた…その意図するところはライトニングには今ひとつよく分からなかった、が。
そして、その日の夜。

「今日ティーダに随分からかわれて凄く恥ずかしい思いをしたんだけど」

どこか不服げにさえ見える表情を浮かべているフリオニールのその表情の意味がライトニングには分からない。
そもそも何故フリオニールがティーダにからかわれたことで自分に文句を言うのかが一瞬繋がらなくて―ライトニングが怪訝そうな顔を浮かべていたことに気づいたのだろうか、フリオニールは微かに拗ねたような表情のまま言葉を繋いでゆく。

「あの、俺のどこがよかったのかって聞かれて…」
「ああ、そう言えばそんなことがあったな。全部と答えたのがそんなに気に食わなかったか」
「…気に食わないわけじゃないんだけどその、他の仲間に言われると結局俺がからかわれることになるから…」

フリオニールが不服を訴える意味が分からないわけではない。そりゃあ、立場を逆にして考えたら他の仲間にそんなからかわれ方をするのは面倒だとはライトニングも思う。
だがそれでも、あの時他にどう答えれば良かったのかと考えて…ライトニングが出した答えは至極シンプルなものだった。

「仕方がないだろう、好きになってしまったんだから…お前の全てを」
「…あのさ、ライト…それはずるい」

目を伏せたフリオニールの呟きの意味が今ひとつ理解できず、ライトニングは小さく首を傾ける。
視線をライトニングから外したまま、フリオニールは小さな声で…どうにかライトニングに聞き取ることができる程度のものでぼそぼそと呟いていた。

「そう言われたら…立場逆にして考えたら俺もそうなんだからもう…納得するしかないだろ」

相変わらずライトニングと目が合わせられないまま照れたような表情を浮かべているフリオニールを見てライトニングには笑みが浮かぶ。
そもそもからかわれるのはこういう性格のせいもあるんじゃないのか、と言いたい衝動に駆られたが、それは―言ってしまうことで変わってしまっても困る、と思いなおして敢えて黙っておくことにしておいた。








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