「私が守ってやる」






「お前は…私が少し目を離したらそれだ」

怪我をしたフリオニールに向かって、ライトニングは呆れたように一言。
言われた側のフリオニールは反論できないのかぐっと黙り込んでいる―が、内心子供じゃないんだからそんな言い方はないんじゃないかとほんの少し思っている。

「あれほど日ごろから無理をするなと…」
「別に無理はしてないさ。ただ相手がちょっと強かったのと俺にちょっと運がなかった、それだけの話で」
「お前が怪我をしているんだ、『それだけ』で済ませられるわけがないだろう」

その口調には些かの怒りが込められている―別に怒られるようなことをしたつもりはないだけに、そのライトニングの態度がフリオニールには理解できない。
別に戦いの中に生きている以上怪我をするくらいどうと言うことはないのだが、それでも何故ここまでライトニングが機嫌を損ねてしまっているのか…そこを量りかねてフリオニールの言葉は続かない。

「…私の知らないところでお前が傷つくのは嫌なんだ」

困惑するフリオニールに気づいたのか、ライトニングがぽつりと一言―
その表情には、怒りでもなんでもなく…どこか寂しさすら感じられて。
フリオニールはどうしても、今のライトニングから視線を離す事が出来ない。その言葉は別に自分を馬鹿にして発したものでもなんでもなく、ただ自分を案じているのだと―それは感情表現が下手で不器用な彼女なりの優しさで、そして―フリオニールへの愛ゆえの発言。

「大丈夫だよ、俺はそう簡単に倒れたりはしないから」
「そう言う問題じゃなくて、だな」

はあ、とひとつ息を吐いたライトニングは顔を上げ、真っ直ぐフリオニールの瞳を見つめる。
そしてその手が、ゆっくりとフリオニールの頬を包む―そのまま語られる言葉はまるで、子供を諭すように優しくもあって。

「まあいい。その件についてはとても簡単な方法がひとつあるんだから」
「簡単な方法って?」

不思議そうに首を傾げたフリオニールに対して、ライトニングは相変わらず優しく微笑みかける。
優しさだけではなく、どこか強さすら感じさせるその瞳の光から―フリオニールは目が離せない。
そのまま、ライトニングははっきりと言い放った。その視線と同じように真っ直ぐな想いをフリオニールにぶつけるかのように―

「私が守ってやる」

言葉が返せない。
ライトニングの言葉はあまりに真っ直ぐで、正面から自分の心を捕らえ射抜くだけの強さを持ってフリオニールに向けられていて。
だから今、ライトニングの言葉に何かを返すことなどフリオニールにはできるわけがなくて。
フリオニールが黙っているからか、ライトニングはそこでとどめることなく言葉を続ける。

「それならお前が私の知らないところで傷つくことはないし、お前が傷ついたとしたらそれは私の責任だ」
「いや、流石にちょっと待ってくれ」

流石にフリオニールはそこでライトニングの言葉を無理やりに止める。
言葉を止められたことで眉根を寄せるライトニングの表情は些か不機嫌そうにすら見えて、フリオニールは自分の意図を伝えるが為に更に言葉を紡ぐ。

「流石に守られっぱなしってのは…俺だって戦士だし、それに…男だし」
「男が女を守らなければならないと言う決まりもないし、女が男を守ってはいけないという決まりもないと思うが」
「それはそうかもしれないけど…」

ああ、どう答えたらいいのだろう。フリオニールは心の中だけで溜め息をついた。
自分の恋人が多少のことで折れることのない強い心の持ち主であることは知っていたが、ここまではっきりと宣言されてしまっては自分は立つ瀬がない。

「一方的に守られるだけなのが嫌ならお前も私を守ればいい。互いに背中を守りあう…理想の関係だと思わないか?」
「…そ、それなら…まだ」

何故だろう。
今の自分は一方的にライトニングに翻弄されてしまっているような気がしてならない。
そんなことを考えながらフリオニールはライトニングから瞳を反らした。
それでもその状況を嫌だと思えないのはきっと、翻弄されている理由がライトニングを愛しているからこそで―そして、ライトニングに愛されているからこそだと、フリオニールは気づいてしまっているから。








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