Chapter/15-4/4-






「皇帝にこの世界を支配なんてさせない。わたしたちはみんな、必ず誰かを守れるはずだから。力を合わせたらきっと、この世界だって守ることができるはずです」
「そーだな、理由は分かんねえけど折角この世界に戻ってきたのに支配されるなんて俺も御免だ―絶対、守ってやる」

ユウナの、プリッシュの―決意を宿した言葉に、一行は顔を見合わせしっかりと頷きあう―明日からは、今までと違う戦いに向かうのだということを確かめ合うかのように。
そして、ティーダの掌がフリオニールの背中を強く叩く。

「何にせよ、この戦いではフリオニールが中心に立つことになるらしいっスからね。あんま無茶すんじゃないぞ?」
「分かってるさ―皇帝を止める、その役目を他の誰かに押し付けたりするつもりはない。皆がいてくれるなら俺は戦えるさ。それに」

その先はフリオニールの口から言葉となって出てくることはなかった。
だが、その視線ははっきりとライトニングを捕らえている―ライトニングもまたフリオニールのことを真っ直ぐに見据えていて、そこに強い信頼関係を感じ取ることはずっと彼らと一緒にいる仲間達には容易な事、だった。

「私は何があってもフリオニールと共に戦う―そう決めた」

普段ならバッツやラグナ、ジタンあたりから茶化す言葉の一つも出てきそうなライトニングのその言葉に何かを言うものはない。
茶化すことが憚られるほどにライトニングの表情は真剣で、仲間達にも伝わるほどの甘い空気は今のふたりからは感じられない。しっかりと視線を合わせたフリオニールとライトニングの間に漂う空気はきりりと引き締まったもので―とても力強くふたつの心を結んでいる。
恋人同士である、それ以上に強く結ばれた仲間としての―パートナーとしての絆。戦いに赴くことになるフリオニールと、共に戦うと決意したライトニング。今のふたりをからかうことなど出来るものがその場にいるはずがなくて。
言葉が途絶え、その瞬間にフリオニールが瞼を閉じる。開かれた瞳には、迷いの色は存在しない。

「俺は―あの人やティナみたいに、倒すことによって皇帝を救いたいと思えるほど寛容なわけじゃない。そう思うには俺は皇帝に色んなものを奪われすぎた」

視線は相変わらずライトニングに向いたままだが、その言葉はその場にいる仲間達全てに―ともすればフリオニール自身に向けられたものなのだろう。
だからこそ、誰も口を挟むことなく真面目な顔で聞いている―フリオニールの、決意に満ちた言葉を。

「これ以上皇帝に何も奪わせはしない。それが今の俺の、戦う理由だ」

はっきりと言い放ったフリオニールの言葉に、仲間達はそれぞれに頷きあう。
仲間を守ると言い切るもの、皇帝の野望を止めると誓うもの。宿敵を止めたいと願うもの、そして誰かを守りたい、世界を守りたいと祈るもの―それぞれの想いを掬い取り包み込むかのように、柔らかな夜風がその場を吹き抜けていった。


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