Chapter/14-4/4-






「お前が誤った道に進むのなら、愛しているからこそ私はお前を止める―盲目に従ったりは出来ない。だから私はアルティミシアとは違う」

そこで一度言葉を切ったライトニングは、真っ直ぐにフリオニールを見上げたままその腕にそっと手を添える。
フリオニールは今の、真剣そのもののライトニングを抱きしめたい衝動に駆られたが―いくら他の仲間がそれぞれに時間を過ごしていると言っても、仲間達の目に留まる可能性のあるところであまり寄り添うこともできずに腕に添えられた手に反対の掌を重ねるのがやっとだった。
ライトニングは掌を返し、フリオニールが重ねた手を緩く握る。

「私とアルティミシア、客観的に見た時にどちらが正しいかなんてことは分からない」
「ライト…」
「だがあの時お前が私と同じ答えを出したから―少なくとも私は私と、そしてお前が正しいと信じられる。だから私は自分が正しいと思った、その感情に従って―お前と共に戦う」

真っ直ぐに互いを捕らえあう視線にもう、迷いなど欠片も存在しなかった。今そこにあるのは、より強くなった互いへの信頼だけ―
ぶつかり合った視線はやがて微笑みに変わり、そしてひとつ頷きあったふたりは再び互いをしっかりと見つめ合う。

「この話をすることで、お前がまた戦うのを躊躇ってしまうのも、私を守るためなんて理由で私から離れてしまうのも嫌だった。だから黙っていた…すまなかったな」
「いや、きちんと話してくれたからそれでいいんだ。でも―俺は決めた」

そこで言葉を切り、フリオニールは一度目を閉じる。
開かれた瞳に映るのはライトニングだけ。彼自身は気づいてはいなかったが、その時のフリオニールの表情はきりりと引き締まっている。
以前からずっと思っていたこと。だがそれを改めて、力強く決意するに至った…ライトニングへの想いを確かめるかのように緩い力で握られていた手をしっかりと握り返した。

「何があっても、皇帝にこの世界を支配なんてさせない―ライトのことも、仲間達のことも、コスモスが遺したこの世界も全て俺が守ってみせる」
「お前のそう言うところは嫌いじゃない…だがひとりで全て背負い込もうとするな」

握り合ったのと逆の手がフリオニールの背中をぽんぽんと叩く。その時のライトニングの表情はとても柔らかな笑顔で、それがまるでぴんと張り詰めたままのフリオニールの心を解すかのように優しく見えて。
背中を叩いた手はそのままゆっくりと上に移動し、今度はフリオニールの髪に触れる。結われたままの長い髪がライトニングのしなやかな指に絡め取られるような、なんだか不思議な感覚―

「言っただろう、お前が私を守るというのなら私もお前を守ってみせると。それにお前が私だけでなく、全てを守るというのなら…私はお前と共に、お前を取り巻く全てを守る」
「…ありがとう、ライト」

今のフリオニールにとっては誰のどんな言葉よりも頼もしいその言葉を噛み締めるかのように、フリオニールは再び目を閉じた。
本当のことを言えば、ライトニングがどうしようもなく愛しくて…この場で抱きしめたいと思っていたが、流石に仲間達の目の前でそんなことはできない。
だからこそ、その衝動を隠すためにも―再び目を開いたフリオニールは握り締めたライトニングの手を再び強く握り締め、誰よりも自分にとっては大切で―そして頼もしいと思える存在を確かめるかのようにその瞳を真っ直ぐに見つめていた。


←Prev  →




MENU / TEXT MENU / TOP
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -