Chapter/14-3/4-






「…昨日、お前達がひずみに向かっている間にアルティミシアに出会った…アルティミシアははっきりと私を狙ってきていたようだった」
「そんなことだろうと思った」

なんとなく予測は付いていた。そこまで頑なに自分に隠し通しているのだから、皇帝一派との間に何かがあったのだろうと。逆に考えれば、そうでもなければここまで頑なに自分に隠そうとする理由がない。
ライトニングを案じて、ライトニングから離れるのを躊躇っていたあの時の自分の姿をライトニングは知っているから…だから話せないと思ったのかもしれない。あくまで全てはフリオニールの推測でしかなかったものの、そう考えれば酷くしっくり来るように思えた。

「それで?アルティミシアに何かされたりは…?」
「軽く怪我をしたがケアルで治した。もうなんともない」

あっさりとそう言い放ったライトニングの表情には動揺などは一切含まれていないようにフリオニールには見えていた。
それが本当なのか嘘なのか、そこまではフリオニールには判断できなかった。怪我がどの程度のものであったかは分からない…本当はライトニングが言うほど軽いものではなかったのかもしれないが、魔法で治したとここまで自信満々に言い切っているのだ。恐らくは、今確かめたところでその傷は治されているのだろう。
どうしたものかと考えていたフリオニールだったがその時に、ライトニングが思い出したように口を開いた。

「…この際だからお前には言っておいたほうがいいだろうな…アルティミシアが皇帝に協力している理由を」
「そう言えば昨日そんな話になったな…何か言ってたのか?」
「愛している…らしいな。皇帝のことを」

ライトニングの放った言葉はフリオニールにはとても意外なもので―どう答えていいのか良く分からなくて、そのままライトニングの顔をじっと見ている。この場には鏡はないが、もしも鏡があれば今の自分が相当間の抜けた顔をしているであろうことは想像に難くなかった。
予想もしていなかった答えだった、としか考えられない。無論、何の理由もなく皇帝に従っているということはないだろうとは思っていたがその答えは明らかにフリオニールの予想の範疇ではなく。

「…そんなに驚くようなことか」
「驚くに決まってるだろ…だって、そんなまさか…そんな理由で」

そこでフリオニールは言葉を止める…思い出したのだ。時間的に考えればきっとアルティミシアと会った後であろう頃に、ライトニングが言っていたこと―心の片隅に引っかかりながら、漠然とした違和感を感じるに留まっていたライトニングの言葉。
突然そんなことを聞かれた意味があの時は分からなかったが、今の話を聞くとその意味がうっすらと理解できた気がして―言葉が滑り出したのは本当に自然なことで。

「もしかして、道を踏み外したらって…それで…」
「ああ。私の行いが明らかに間違っていたとして、その時お前がどうするか…それを聞きたかったんだ。だが心配する必要はなかった…お前は、私に迷う必要などないと教えてくれた」

何かを思う様にライトニングは一度フリオニールから視線を外す。そして、いつものように真っ直ぐにフリオニールのほうを見上げた。
何の迷いもないその瞳が、しっかりとフリオニールを捉える。その瞳から目を逸らすことなどフリオニールに出来るわけがない。視線はしっかりとぶつかり合い、そして…ライトニングが口を開く。

「戦う理由は同じなんだ―私もアルティミシアも。それでも私とアルティミシアは違う。…だが本当に違うのか、自信がなくなっていた」

戦う理由は同じ。
アルティミシアが皇帝を愛し、皇帝の望みを叶えるために戦っている―それと同じように、ライトニングはフリオニールを愛し、フリオニールの夢を叶えるために戦っている。
ライトニングの言葉を止めることが出来なくて、口を挟むのが憚られて。フリオニールは黙ったまま、ライトニングの言葉が続くのを待っている。それに気づいているのか、ライトニングは更に言葉を続けていた。

「…それで、もしもお前が自分以外の全てを蹂躙する形で世界の支配を望んだらどうするか、それを考えてみた…それで分かったんだ、やはり私とアルティミシアは違う」

自分の瞳を見据えるライトニングの目から目が逸らせないまま、フリオニールはその次の言葉を待つ。
フリオニールが何も言わないのはただライトニングの言葉を待っているからだと彼女自身も気づいているのだろう。時々何かを考えるように言葉を切りながらも、いつものように淡々とした口調でただただ言葉を紡いでゆく。


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