Chapter/14-2/4-






どう話を切り出したものかと考えていたが、そこでフリオニールはひとつライトニングが言っていたことを思い出した。

「ライト…前に言ってたよな。俺に何が起こってるのか推測すら出来ないことに腹が立っているって」
「そう言えばそんなことも言ったような気がするが…それがどうかしたのか」

あっさりとそう言い放ったライトニング…だが、一瞬だけ視線が揺れ動いたことにフリオニールはすぐに気がついた。だって、普段の彼女ならそんなことはありえない―そのくらいのことは、ずっとライトニングと一緒にいれば分かるようになっている。
身体ごとライトニングの法に向け、真っ直ぐにその目を見遣った。今、誤魔化されてしまうわけには行かない。ライトニングがかつてそう言ったように、自分だって―

「それ、俺も同じだって事くらい分かってくれるよな」
「…どういう意味だ」
「俺に…何か隠してるだろ」

その言葉に、微かにライトニングは目を見開き―すぐに、その視線はフリオニールから逸らされる。…それが、何よりの答え。
それでも口を開くことはない。いつもなら立場は逆になっているような気がしているのに、言葉に出来ない何かを抱えているのはいつもなら自分で、その度にライトニングは言う―お前は嘘が下手だと、どれほど私がお前を見ているのか分かっていないのか、と。
立場が逆になっただけなのに、普段ライトニングが言うことが手に取るように分かる。フリオニールの中にあるのは、目の前にいる恋人がとてつもなく遠い存在であるように感じる錯覚と何も言わないライトニングへの苛立ち、そして―何も言わせることの出来ない自分への無力感。
普段、ライトニングはこんな気持ちを隠しているのかと思うとなんだか申し訳なくもあった…が、それとこれとは話が別、である。

「…気づいてるだろ?俺だってそんな…そりゃ、ライトほど鋭いわけじゃないけどライトが何か抱えてるのに全く気づかないほど鈍いわけでもない」

相変わらず言葉はないものの、ライトニングはどう答えるべきかを決めかねているかのように視線を彷徨わせている。
ライトニングが何を隠しているのかは分からないし、それを自分が聞くべきなのかどうかも分からない。だが、ライトニングが隠している「何か」が自分に全く関係がないなんてことはありえないことくらいは予想が付いている。そうでなければライトニングが頑なに口を閉ざす理由に説明が付かないのだから。

「まるで普段と立場が逆だ」
「それ、俺も思ってた」

冗談めかしてそう言ってやると、ライトニングは深く溜め息をつく。そしてそのまま、フリオニールの目を真っ直ぐに見上げた。
どこか躊躇いがちにも見える、それでいて―いつものライトニングらしい、力強さを秘めたその眼差しをフリオニールはしっかりと見返す。

「それなら―普段の自分の立場に置き換えてみたら気づかない振りをしてくれてもいいとは思わないのか」
「じゃ、立場が逆だったらライトは気づかない振りをしてたのか?」
「…私にそんなことが出来ると思うか?」

そう言ってしまってから、ライトニングは再び溜め息をついた。納得が行かないことを納得が行かないままにしておけないのがライトニングの性格だと言うことを逆手に取った誘導―自分が気づかない振りが出来ないのだから、フリオニールにそれを強いることもライトニングには出来ない。
今の話の持って行き方は少しずるかったかもしれない。内心そんなことを考えながらもフリオニールはライトニングに笑顔を向け、その両方の肩にゆっくりと手を置いた。

「…話してくれるよな、ライト」
「話すことでお前に心配をかけることになるのは嫌だったんだがな」

三度目の溜め息と共に、何かを思い出すかのように視線を遠くへ向け―ぽつりぽつりとではあるが、どこか不本意そうに見える表情のままのライトニングの口からは言葉が滑り出し始めた。


←Prev  Next→




MENU / TEXT MENU / TOP
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -