Chapter/01-4/4-
「暫く、行動する時にユウナと離れないでいられるようにして欲しいっス…そりゃオレと一緒にいたらそれはそれで危ないのかもしれないけど、ユウナが狙われたら―オレが守る」
「今の話を考えればユウナはこのことを知る権利があるだろう。その件については私は止めないが…だが、他の仲間に話すのは少し待って欲しい」
苦々しげな表情を浮かべたウォーリアオブライトは、視線をティーダから全員の方へ移してゆっくりと言い含めるように言葉を繋いでゆく。
セシルも、スコールも、フリオニールも…その言葉を待ってじっとウォーリアオブライトを見つめていた。
「今話してしまえば無駄な混乱を招く可能性がある。暫くどうするか、方針を検討したい」
そこで一度言葉を切ったウォーリアオブライトは、その歪みのない視線を今度はゴルベーザとジェクトに交互に送る。
その瞳は強く…そしてその奥にある優しさはかつて、彼が命を賭して守り続けた秩序の神が持っていたそれとよく似ていて。
「ここにいる者たちの胸に収め、それぞれが自衛に努めれば済む話であればそれで終わらせたい。ただでさえこの世界に再び集められたことを不安に思っている者がいる状況で余計な心労をかけるわけには行かないのでな」
「ふむ、わかった…では、我々はこれで失礼しよう」
ゴルベーザが立ち上がり、マントを翻して踵を返す。ジェクトもそれに続いて立ち上がり彼らに背中を向ける―
その背中を見つめていたセシルとティーダ。一瞬2人は目を見合わせ、そしてこくりと頷きあった。
「待ってくれ、兄さん」
「言い逃げとか許さないからな、オヤジ」
弟の、わが子のその言葉に一度は彼らに背中を向けたゴルベーザとジェクトが振り返る。
そしてまた―先ほどと同様の一切歪みのない視線がウォーリアオブライトから2人へと向けられる。
「誰が去っていいと言った?私は方針を検討すると言っただろう。その方針が決まるまでは我々の元に留まってもらわないと困る」
そう言い放ったウォーリアオブライトが微かに微笑んでいるような気がしたのは…彼らの気のせいなのだろうか。
無論彼がそんな冗談めかした物言いをすることそのものが珍しくもあり…フリオニールとスコールは思わず顔を見合わせた。
何かを言葉にすることはないが、それでも、ウォーリアオブライトが言いたいことは理解できる。つまり、彼は…セシルやティーダと同様、去ろうとしている2人と共に行こうと言っているのだ…
「しかし、私たちが一緒にいれば無用の危険を招く可能性がある」
「その危険は私と、セシルやティーダが払うだろう。違うか2人とも」
ウォーリアオブライトのその言葉に、セシルとティーダは力強く頷いた。
「当たり前じゃないか。今まで僕を導いてくれた兄さんへの恩を返すときは今だって思ってる」
「そのとーり。それに、これでオヤジにオレはオヤジを超えたって証明してやるッス」
「…ガキどもが、ナマ言いやがって」
ジェクトがぽつりと呟き、そしてゴルベーザとジェクトは視線を合わせた。
互いに、どうするかを思案するような表情を浮かべていたが…先に口を開いたのは、ゴルベーザだった。
「それならば…そなたが結論を出すまでは共に行こう」
その答えに、セシルとティーダは顔を見合わせて笑みを交し合った。
兄を守る、父を超える―それぞれの決意がその笑顔の中に浮かんでいる。
そんなふたりを見つめるゴルベーザとジェクト…ゴルベーザの表情はわからないが、少なくともジェクトにも微かに笑みが浮かんでいるのが見て取れて―緊迫した状況とは言え、何故だろうかそれが微かに彼たちの心を軽くしたような―そんな気が、していた。