Chapter/13-4/4-






「何故戦う?この戦いの先に何がある?神々の戦いの輪廻が終わったところでこうしてまた戦いは続く。その宿命の先に…何がある?」
「そんなの、終わらせてみなきゃ分かんねえだろ」

プリッシュの声には微かな苛立ちが含まれている―断られるのは無理もないが、ガブラスのその態度に対して怒りを覚えている、といったところだろうか。

「終わらせることなど出来るものか。戦いを繰り返しても何も変わることはない」
「なあ、あんた」

全てを諦念したようにそう呟いたガブラスの言葉に、それまで黙っていたヴァンが一歩ガブラスに向けて足を踏み出した。
ガブラスはそのヴァンの顔を見て…一瞬驚いたような表情を浮かべたものの、すぐに黙ったまま視線をヴァンから逸らす。

「虚しくないのか?こんなところにずっとひとりでいて、何も変えられないなんて最初から諦めて」

続けられるヴァンの言葉にガブラスは答えない―ただ、ヴァンから視線を逸らしたまま黙って立ち尽くしているだけで。
何かを言おうとしていたはずのプリッシュでさえ言葉を続けることが出来ないまま、ガブラスに対してのヴァンの問いかけはまだまだ続く―

「…戦って何も変わらないなんてことはない。戦わなきゃ何も変えられないんだ…逃げるのだけは絶対に嫌だ、だからオレは皆と一緒に戦う。あんたは…どうなんだ」
「若いな、お前は」

たった一言だけ返されたその言葉、そしてガブラスは一行に再び背を向けた。
その背中に向けて再び何かを言いかけたヴァンだったが…言葉にならない、といったような様子で一度口を噤み、それから暫くの間重苦しい沈黙が場を支配する。
その沈黙に耐え切れなくなったのか、それとも言うべき言葉を見つけたのか―暫しの静寂の後に響いたヴァンの声は、どこか寂しそうにさえ聞こえて。

「オレ…今ものすごく、あんたのこと可哀想だなって思った」
「同情など…不要だ」
「だけどさ、あんたは―きっとほんとはもっと強い人なんだって分かる。それなのに、戦う前から全て諦めて―そうしなきゃいけない何かがあったのかもしれないけど、でもあんたは―」

そこまで言って、ヴァンは再び口を閉ざした。これ以上言っても無駄なのは、ヴァンにだってもう分かっているのだろう―
そして、予想通り。背中を向けたままのガブラスは一言だけ言い放った。

「何を言われようと、私はこれ以上戦うつもりはない―このまま再びここで、地獄の番犬でい続けるだけだ」
「…そ、か。残念だよ」

ヴァンは再び踵を返し、ウォーリアオブライトたちの元へ。プリッシュもその後を追い、5人は顔を見合わせた。

「悪いな…無駄足になっちまって」
「いや、君が気に病むことではない。さあ、仲間達の元へ戻るとしようか」
「みんな無事かな…何も起こってなきゃいいっスけどね」
「そんな心配しなくても大丈夫だろ、あいつら強いし」
「そうですね…じゃあ、帰りましょうか」

そんな言葉を掛け合いながら、5人はひずみの外へ繋がる烙印に手をかける―その気配がひずみの中から消えるのに、さほどの時間はかからなかった。

「終わらせる…か。私にもその気概があれば己の宿命を恨み、抜け出せないこの地獄に留まることもなかったのかもしれない」

そう呟いたガブラスの表情がどこか懐かしそうに見えたことに気づいた者は―当然、その場所には誰もいなかった。


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