Chapter/13-2/4-






「うん…やっぱりオレ、ここ…来たことがある。見覚えがあるんだ…色々と」

ぽつりと呟いたヴァンは、イミテーションが行く手を阻むひずみの中をきょろきょろと見回している―だけならいいのだが、突如走り出しては先の様子を頼まれもしないのに見てきて、引き返してくる最中にイミテーションに襲われたりもしていて。
その様子を見ていたティーダがぽつり、呆れたように一言だけ呟いていた。

「ヴァン、あんまり先行くと迷うっスよ」
「違うんだ…オレ、前にここにきた時、迷い込んだ…気がするんだ。だから逆に迷子になった方が目的地にたどり着けるのかなあって」
「…迷い込んだ…?」

不思議そうに首を傾げたユウナに、ヴァンは大きく頷いてみせる。
思い出すように虚空へと視線を送り、そして…思い出せたことを伝えるかのように短く言葉を切りながら、ヴァンの話は続く。

「ほんとになんとなくしか覚えてないけどさ…ここに迷い込んだオレを、聖域まで導いてくれたヤツがいた。もしかしたら、プリッシュが会いに行きたいって行ったのもそいつなのかもしれないって」
「でも、ヴァン」
「そいつ、言ってたんだ。確か、自分の使命は迷い込んだヤツを導く為だって。だからオレたちも迷ってたらまたアイツに会えるのかな、って」

そのやり取りを、最後尾で黙って聞いていたウォーリアオブライトではあったがそれでも嗜めるかのようにヴァンの肩に手を置いた。

「だが、無駄な時間を使っている場合でもない。我々の戻りが遅れれば他の仲間が心配するだろう」
「でも」

言い返そうとしたヴァンの言葉を遮るようにウォーリアオブライトは首を横に振る。そして真っ直ぐにヴァンを視線で捕らえた。

「前に来た時に迷い込んだというのが真実だとしても、迷っていて目的地にたどり着けるかどうかは分からない。それに、君がたどり着いた場所がプリッシュの目指す場所と必ずしも同じだとは…」
「つーかそのプリッシュは何処行ったんスか」

ティーダに言われて一行はあたりを見回す―確かにいつの間にかプリッシュの姿は目の届く範囲からは消えていた。
ウォーリアオブライトは眉根を寄せ、そして深く溜め息をつく―彼がここまで振り回されている姿を見ることが珍しいからか、ヴァンとティーダ、それにユウナは一様に顔を見合わせた。

「まさかとは思うがはぐれたのだろうか」
「だとしたら早く探しに行かないと…イミテーションだって徘徊していますし」

ユウナが言う前にウォーリアオブライトは一歩足を踏み出していた、が。
そのウォーリアオブライトの背後から足音が聞こえたかと思うと、衝撃音と共に背後からその首筋に絡み付く褐色の腕。引っ張られる形になったウォーリアオブライトの背中が大きくのけぞる。

「おい、何ちんたら歩いてんだよ」

その声からも褐色の腕からも想像できる通り勿論そんなことをするのはプリッシュしかいないわけで―
いつの間にかウォーリアオブライトの背後に回り、ジャンプで飛び掛ってその首に飛びついたままぶら下がっているプリッシュは悪戯っぽい笑みを浮かべたまま真横にあるウォーリアオブライトの顔を見ている。

「…つまらない悪戯をしている場合だと思っているのか」

鎧を着込んでいるため特に呼吸が阻害されたようなこともなく、ウォーリアオブライトはひとつ溜め息をつくと冷静にプリッシュの腕を振り解いた。
プリッシュのほうは一瞬だけ拗ねたように唇を尖らせながらも素直に腕を振り解かれ、軽やかに地面に着地するといつものようにウォーリアオブライトを見上げている。
別に悪びれる様子もなく…それがいつもの彼女と言えばそうなのかもしれない。普段共に行動していなかったとは言え、「いつもの彼女」のことを良く知る程度には彼女は秩序の神の戦士達とは共に行動している時間が長いのだ。

「お前らがのんびりしすぎてるから迎えに来ただけじゃねえか。とりあえず、もうちょっと先に行けば会えると思う」
「なあ、プリッシュ」

再び先頭に立って促すように歩き出したプリッシュに、ヴァンが背後から声をかけた。

「どうした?」
「…お前が会いに行きたいって言ってるヤツ…どんなヤツなんだ?」
「俺も良く覚えてない…な、うん。この世界に戻ってくる前にチラッと会ったことがあるだけだから」

プリッシュの答えには若干期待はずれだというような表情を浮かべて、ふぅんとヴァンは小さく呟く。
それが気に入らなかったのか、プリッシュは一度振り返ってヴァンを見上げる…が、その視線の意味が分からないのかヴァンはそれを特に気に留めるでもなくそのまま歩いている。


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