Chapter/12+-2/2-






「…この輪廻は大いなる意思が望んだものではない…寧ろ、一度断ち切られるべきもの」
「ほう?」
「だが皇帝がこの世界を支配することによって、断ち切られるべき輪廻がそうされぬまま残る…わしと彼奴は進むべき戦いの輪廻に向かうことが出来ず、この閉ざされた輪廻の中に残らなければならなくなってしまう」

一度振り返ったガーランドの視線が捕らえていたのは、先ほど秩序の神の戦士達とであった場所の方向。
ガーランド自身も歩き、また戦士達も既に歩き出しているのでそこにはもう誰の姿もない―ガーランドが見ているのはそんな直接的なものではなく、きっと彼にしか見えていない「断ち切られるべき輪廻」…。
暗闇の雲は言葉もなく、そのガーランドの様子をじっと見据えている。ガーランドの言葉を待っている、その様子を見ていればそのくらいのことは分かる。
期待に応えるつもりがあるわけではない、だがそれでも―暗闇の雲がどういう選択をするのか、それに自分の言葉が何か影響を及ぼすのであれば放すのもまた一興―そんな考えがガーランドの中になかったといえばそれは嘘になる。

「この輪廻を、大いなる意思が望むように断ち切るためには皇帝の支配が邪魔になる。その役割をわしが果たすか、奴らに託すか…それを見極めたかった」
「結果、お前はその役割を奴らに委ねることを選んだ…そう言うことか」
「…わしは彼奴と戦う宿命のみを背負っておる…ゴルベーザやジェクト、クジャのように彼奴らと共に行くことなど叶うべくもない」

ガーランドは身体ごと暗闇の雲の方へと向き直り、再びその目を真っ直ぐに見据えた。
選んだ道は違えども、皇帝の野望に屈することが出来ないのは2人とも同じ。
無論、馴れ合うつもりがあるわけでもない。それは混沌の神に共に仕えていたときから変わってはいないが―だが、神々の戦いから外れた今このとき、同じ方向を見ながら違う道を進むことを選んだ彼女に対して初めて「仲間意識」めいたものが芽生えたような気がしたのもまた事実―

「貴様もそうだろう、彼奴らに手を貸したいと望めども共に行くことが叶わぬと知っている…だから、彼奴等の側にありながら共には行かぬ。違うか」
「共に行くことはわしの意に沿う行動ではないというだけの話よ」
「貴様がそう言うのならばそう言うことにしておいてやろう」

そしてガーランドは再び暗闇の雲から視線を外し、歩き始める。
その背中には暗闇の雲の視線をずっと感じていたが、これ以上ガーランドから彼女に対して言うことは何もない―だが、なんとなく予想をしてはいた。その後、暗闇の雲から言葉が再び投げかけられるであろうことは。

「…もう、お前と会うことはないのかもしれぬな」
「恐らくは。わしは彼奴等がこの世界の輪廻を断ち切るその瞬間まで彼奴等の前に姿を現すつもりはない―貴様が彼奴等の近くにあるというのであればもう、会う事はないだろう」

暗闇の雲の方を見ないまま、ガーランドは小さくそう呟いた。
もしも秩序の神の戦士達であれば、それを…「今生の別れ」を惜しみ、悲しむ位のことはしていたのかもしれない。だが自分たちはそうではない…ただ同じ神に呼び出され仕えただけ、仲間だなどと思ったことは一度もない―

「最後の最後にお前の考えていることが分かった気がした。もう遅いのだろうが、な」
「別に分かって欲しくて話した訳ではない―貴様もそうだろう」
「だが、もっとはやくに気づいておれば…お前のこともまた、興味深い存在だと思えたのかも知れぬと考えるとほんの少し惜しくもある」

暗闇の雲の言葉に微かに笑みが含まれているような気がしたのはガーランドの気のせいだろうか。
それでもガーランドは振り向くことはなく―短く、一言だけ付け加えた。それはきっと、かつて神々の戦いの中であれば決して口にしなかったであろうこと。

「語るに落ちたか―今までわしに興味を持ってはいなかったということだな」
「これが最後だというのならそれもいいだろうと思ったまでよ―こんなことを考えるあたり、わしも彼奴等に感化されておるのかも知れぬな」

その答えに、ガーランドはもう言葉を返さなかった。
再び大剣を引きずり、そのまま足を進める。その先に見えているものは、この世界の戦いが終わった後―彼が「還る」べき輪廻。
その輪廻で再び宿敵と相見えること、それだけを考え…ガーランドはいずこへともなく姿を消した―


←Prev  →




MENU / TEXT MENU / TOP
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -