Chapter/12+-1/2-






ガーランドはただ歩く。大剣を引きずりながら、そしてウォーリアオブライトから受けた傷をかばいながら。
彼らであればきっと、この「戻ってきた輪廻」の先にいる者に気づき、そして…この世界を解き放つだろう。
その時自分はまた新たな輪廻へと旅立つことが出来る。その向こうで再び、彼とは相見えることとなるであろうことを知っていたからこそ。
仕えた神ではなく、その「向こう側」にいたものが望むものを知ってしまっていたからこそガーランドは再び戦う選択をした。
皇帝の支配によって、その「大きな流れ」を止めることはガーランドには決して出来なかった…

「…お前といい皇帝といい、一体何を考えて何を企んでおるのかが全く掴めぬな」

ガーランドの背後から聞こえた声…振り返れば彼にはすぐ判別できた通り、そこにいたのは暗闇の雲。
ふわふわと宙に浮かんだまま、じっとガーランドを見据える彼女に一瞥をくれると小さく息を吐く。そして、浮かんでいると言うのに然程自分と高さの変わらぬその視線を真っ直ぐに己の視線で捕らえた。
考えてみればこの世界に再び自分たちが呼び集められてから、彼女の姿を見たのはこれが初めてかもしれない。

「一体今までどこに潜んでおったのだ」
「わしがどこで何をしていようとお前には関係あるまい。お前もアルティミシアも妙なことを気にするものだ」

アルティミシア、の名にガーランドの動きが一瞬止まる。その後、一緒にするなと呟かれた言葉には明らかな不快感の色が秘められていた。
無論、暗闇の雲の側にはそれに対して何かを思うようなことがあるわけでもない。黙ったまま、じっとガーランドのほうに視線を送っている。

「…その様子だと貴様は皇帝に従うつもりはないようだな」
「わしは誰にも従わぬ。だが、この世界の均衡が崩れる時が来たら…皇帝に抗うものに力を貸す。わしが望むはただ、均衡の保たれた世界のみ」
「まさか貴様が調和の神の駒どもに力を貸す気になるとは思うておらんかったわ」

その言葉に嘘はない。ガーランドから考えれば、暗闇の雲はそんな感情とは最も縁遠いところにいるように思えていたのだから。
言われた側の暗闇の雲はそれに対して何かを思うことがあるわけでもない様子でただガーランドを見据えている。

「闇の力が強くなりすぎれば光の力を重ね全てを無に還す―わしの役割はただそれだけのこと」

彼女らしい、ガーランドはそう思っていた。
混沌の神の駒であった頃からそうだった。彼女は戦いそのものに対して興味を抱いている素振りは全く見せず、ただこの世界の中で己の望むがままに生きていた―無論、他にもそのような戦士は数多存在したが、調和の神の戦士にただ「興味がある」と言うだけで道を示したのは彼女くらいのものだった―
今の彼女はそのときと全く変わらない。皇帝の支配にもこの輪廻の行く末にも興味はない。ただ、秩序の神の戦士達の行く末に興味を抱き、必要とあらば力を貸すとまで口に出している―それが奇妙な安心感を覚えさせるのは一体何故なのだろうか。

「…それよりも、わしはお前の望むことが分からぬ。光の戦士と戦うことがお前の望みではなかったのか」

その言葉と共に暗闇の雲がガーランドを見据える目に宿るのはかすかな不信感。
それよりも何故彼女は自分と、秩序の神の戦士達のやり取りを知っているのだろうか。少し考えはしたものの、彼女の言葉を考えればすぐに分かる。
共に行くわけではなくとも、調和の神の戦士達の行いを見守っているのだろう。いつか皇帝と戦うべき時に、本当に彼らが力を貸すに値するか確かめる為に。
そう考えれば…彼女には全てを話してもいいような、そんな気がしていた。この戦いの行く末にあるもの、神々なき世界で戦士達が何を望まれているのか…そのことを。


←  Next→




MENU / TEXT MENU / TOP
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -