Chapter/12-4/4-






ちらりと表情を伺って差し伸べられた手を取って立ち上がったプリッシュに対し、ウォーリアオブライトは引き続き冷静に一言。

「これは私とガーランドの問題だと言っただろう?何故己の身を危険に晒してまであんなことを」
「分からねえなら分からねえままでいいんだよ。勝ったんだからいいじゃねえか」
「…いつまで経っても私には君が理解できそうにない」

常に冷静な彼には珍しく大きく溜め息をついたウォーリアオブライトに、プリッシュは笑いながら鼻の下を擦ってみせる。
そのやり取りを見ていたガーランドはよろよろと立ち上がり、そしてその剣を引きずりながらウォーリアオブライトの方へと脚を進めた。

「…まだ戦うと言うのか」
「今はこれ以上は追わぬ」

その言葉の意味が理解できないのか、微かに眉を寄せたウォーリアオブライトのほうをガーランドは兜の奥から真っ直ぐに視線で捕らえている。
そのウォーリアオブライトの様子は気に留めることもなく、ガーランドは剣を引きずりながら背を向け―歩き始めた。

「この輪廻が終わったとて、そこにはわしを待つ新たな輪廻がある…大いなる意思が貴様らを選び、貴様らがこの輪廻からの解放を目指すと言うのであれば…わしはそこへ向かうことにしよう」
「ガーランド…お前は私たちに一体何を求めているんだ」
「貴様がそれを知るのは皇帝の野望を打ち砕き、大いなる意思の望む『結末』を迎えたとき…新たな輪廻で再び相見えようぞ、我が宿敵よ」

そしてガーランドの身体が闇に融けはじめる―一瞬だけ黒い光がガーランドを捕らえ、その光が消えた時その姿はもうそこには存在しなかった。
何も言葉を発することが出来ず、ただそれを眺めているだけのウォーリアオブライト…仲間達が彼に向けている心配そうな視線に気づいたのか、考えていたことを敢えて口に出していた。

「…ガーランドは結局、私にとって宿敵である以上のことは何も出来ないと言いたかったのかもしれない」
「どう言うことだ?」

問い返したのはライトニング。その問いかけは当然のものだと思ったのだろう、ウォーリアオブライトは更に言葉を続ける…
いつもの無表情の奥に秘められた感情、仲間の誰もその意味に気づくことはないままに。

「皇帝を倒すのに力を貸すことも、皇帝に従うことも出来ない。ガーランドに出来るのは私と戦うことだけ…奴の言った『大いなる意思』が何を指すのか私には分からないが、運命の流れがどちらを選ぶのか…それを試したのではないだろうか」
「結果、勝ったのはお前だった。だからガーランドは姿を消した…か」
「無論私の勝手な推測に過ぎない。だがガーランドはもしかしたら私たち以上にこの世界からの解放を願っているのかもしれない…そんなことを、何故か思った」

ウォーリアオブライトは一度だけ目を閉じ、そして…開かれた瞳に既に迷いは存在しなかった。

「皇帝の野望を打ち砕く。そしてこの世界からの解放を…ガーランドとの決着はその後、私自身の手でつける。そのためにも今は進むしかない…プリッシュ、道案内を頼む」

一歩脚を進め、傍らに立っていたプリッシュの方に、ウォーリアオブライトはちらりとだけ視線を送った。
いつものように、進むべき場所をただ見据えている彼の瞳をプリッシュの大きな瞳が見つめ返す。冷静な光と勝気な視線がぶつかり合い、そして。

「…強くなったな、お前」

そう呟いて再び歩き始めたプリッシュに、微かに笑顔を向けるとウォーリアオブライトもその後ろに続いて歩き始めた。
そして仲間達も、自然とそれに続く―先頭を歩くウォーリアオブライトの背中を、自分たちを守るという使命とガーランドと戦う宿命、重い二つの運命を背負うその背中は何よりも頼もしく見えていて―

「…迷っている場合じゃない、か」

ウォーリアオブライトの背中から視線を外すことの出来ないフリオニールの呟きの意味に気づいた者は、その場には誰もいなかった。


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