Chapter/01-3/4-
「皇帝は己の支配を拒む者は全て排除するつもりでいるようだ。私は彼らへの協力を拒んだがゆえに彼らに追われる身だ」
「ついでに言うとオレはそのゴルベーザを助けたから一緒に追われてる、ってこった」
「そして、かつてコスモスに仕えたそなた達が皇帝の支配など受け容れるわけがないと私は思ったが…この推測は間違っているか」
混沌の神に共に与していた皇帝に追われているというゴルベーザとジェクトを交互に見ていたウォーリアオブライトではあったが、ゴルベーザの問いかけには無言で首を横に振った。
だろうな、とゴルベーザが短く呟き―そこから、言葉を出す者は誰もいない。
暫しの重苦しい沈黙―誰もがそれに耐え切れなくなった頃に、セシルがぽつりと呟いた。
「兄さんとジェクトは…皇帝と戦うつもりなんだね」
その言葉に目を見合わせたゴルベーザとジェクト。2人はゆっくりと頷いて一座を見渡した。
「この戦いにお前達を巻き込むのは私の本意ではない。だが、奴らが私とジェクトを敵と看做した以上…お前達が我々の『弱点』として狙われる可能性がある」
お前達、と言う言葉と共に、ゴルベーザの視線はセシルとティーダに交互に注がれる。
セシルは真っ直ぐにゴルベーザを見据え、ティーダは…ジェクトの方に一瞬だけ視線を送り、言いたいことがあるかの様な表情を浮かべてすぐに逸らした。
ついでゴルベーザの視線はフリオニールの方へ。
「そして、皇帝はそなたの存在を脅威に思っている」
「俺の存在を…?」
「そなたに幾度も己の野望を破られたことを相当恨みに思っているようなのでな。だから、同じようにそなたも危険に巻き込まれうる。更に言うならアルティミシアが同じことを考えていないという保障はない」
次にゴルベーザの視線が移ったのはスコールの方向。
スコールは答えない。黙ったまま、ゴルベーザの話に耳を傾けている。
「なぁ、オヤジ」
黙っていたティーダが、ジェクトに視線を合わせないままぽつりと呟き―全員の視線がそちらへと移る。
「オヤジ達が皇帝に追われてる、だからオレも危ないってことは…オレと一緒にいたらユウナが巻き込まれることもありうるってことだよな」
「ないとは言えねえな。だが、だからってバカな事考えんじゃねぇぞ」
「バカな事って…!オレは真剣に考えて…!」
そこでティーダは唇を噛み締める。
ティーダが考え付いた「バカな事」の察しはつく。ユウナを守る為に、ユウナから離れることを考えた―きっと、そんなところだろう。
「だからお前はガキなんだよ」
「けど、オレは…!」
「逆に考えろ。オレと因縁があんのはユウナちゃんも一緒だろ、そうなったらお前が側にいようといまいとユウナちゃんだって狙われる可能性があんだ」
諭すようにそう言ったジェクトの言葉に、それ以上ティーダは反論しない。
ティーダの気持ちは分からないわけではない、だがティーダの考え付いたことが正しいわけでもない―ジェクトの言葉からそれが分かるだけに、誰も何も言えない…
そしてまた場を支配するのは重苦しい沈黙。
今度の沈黙を破ったのはゴルベーザ、だった。
「私たちに今話せることはここまでだ。この話を他の戦士にするかどうかはそなたたちに任せる」
「オレはユウナに話すっスよ…それと」
あっさりと即答して、そしてティーダはすぐにウォーリアオブライトのほうへ視線を送る。
その表情には決意の色が宿っている。ティーダが何を言い出すか、誰もが理解はしていたがそれでもティーダの言葉を止めようとするものはない―