Chapter/12-2/4-






「随分と勘が鋭いようだな」
「何をしに来た?」

ガーランドを真っ直ぐに見据えるウォーリアオブライトの視線の鋭さは射抜くかのようにガーランドの姿を捉えている。
それにたじろぐことのないガーランドは鼻で笑うかのような声を漏らし、ウォーリアオブライトを真っ直ぐに見据え返した。

「何をしに来ただと?愚問だ、わしは貴様と戦う為、そのためにここにいる」
「私の側には今はその意思はない。今はお前と戦うよりも他になすべきことがある」
「どんなに足掻こうとも輪廻から逃れることは出来ぬ。わしも貴様も、そして皇帝も」

皇帝、の言葉にウォーリアオブライトの眉が微かに上がる。
ウォーリアオブライトの考えそうなことは分かる。ガーランドは何か知っているのだろうか、そうだとしたら確かめなければならない―きっと、そう思っているのだろう。戦士達を束ねる者として。
その想像は恐らく当たっていたのだろう―あくまで冷静なウォーリアオブライトは、抜き身の剣をガーランドのほうへと向けた。とても短く的確な言葉と共に。

「お前は何を知っている?」
「…知っていることはただひとつ、貴様もわしも結局戦いの輪廻からは逃れられぬ…ただそれだけのこと」

ウォーリアオブライトが剣を向けたことに対し、ガーランドが何故か満足そうに見えた―兜の向こうの表情は誰にも分からないのに、何故そう思えたのか。
笑い声を上げたでもなく、表情が変わったことが分かるでもなく。それでも伝わってくるガーランドの喜びの感情、その理由が分からず逆に一同には困惑の感情が芽生えていた。
ウォーリアオブライトに対して向けられた言葉のその声音が微かに嬉しそうに聞こえた気がした、ただそれだけではない「何か」を今のガーランドからは感じる…ガーランドは一体何を思い、何を決意して戦いに挑むと言うのだろう。

「それでもまだ、支配を目論む者もいればその支配から逃れようとするものもいる…だがこの世界は結局、闘争の舞台であることに変わりはない」
「既に神々はこの世界には亡い…それでもまだ戦うと言うのか」
「神は亡い…か、知らぬと言うのは哀れなことよ」

言葉と共に武器を構えるガーランド。今にもウォーリアオブライトに襲い掛かりそうに見えるその姿に、仲間達の中に緊張が走る―
ガーランドの言葉の意味は誰にも分からない。既にこの世界に、カオスもコスモスも存在しない―それは間違いないというのに、ガーランドは一体何を知っていると言うのだろうか?
だがしかしそれに怯むことのないウォーリアオブライトは剣を構えたまま、じっとガーランドを見据えている。互いの距離を測るかのように。

「例え知らないことがあるとしても我々はそれすら超えてみせる…そして輪廻に捕らわれるお前を輪廻の鎖から解き放ってみせよう、何度でも」
「…それでこそ我が宿敵」

呟いたガーランドは声を上げて笑う。彼が望むものが何なのか、それは誰にも分からない―きっと、ガーランドと対峙しているウォーリアオブライトにすら。
しかし分からないまでも、真っ直ぐにガーランドを見据えるウォーリアオブライトの目に一切の揺らぎはない。戦う決意の光がそこにははっきりと宿っている―仲間達の先頭に立っているが故に、その光の存在に気づいたのはきっとガーランドだけだった出あろうが。
一瞬だけちらりと背後を見遣った彼と目が合ったのはフリオニール。視線が合うと同時に、ウォーリアオブライトは短く言葉を放った。

「これは私とガーランドの問題だ。君たちは下がっていろ」
「しかし」
「仲間に手を出させはしない。仲間を守り未だ続く輪廻を断ち切る…それが私の宿命だと言うのならば」

すらりと抜き放った剣を構え、他の仲間たちを守るかのように一歩進み出たウォーリアオブライトはすぐに、大きく脚を踏み出しガーランドとの距離を詰める。
迎え撃つかのように大剣を振り上げたガーランドの、その剣が振り下ろされる動きを予測していたかのようにひらりと身をかわしたウォーリアオブライトは手にした盾をガーランドに向かって投げつける。
投げつけた盾はガーランドの身体を的確に捉え、軌跡を描いてウォーリアオブライトの手元へとその身体が引き寄せられ、引き寄せたガーランドを再び盾で上方へと打ち上げる。
無防備になったガーランドとの距離を詰め、ウォーリアオブライトは何の躊躇いもなく剣を振り上げた。

「受けてみよ!」

幾度もその剣でガーランドを斬りつけ、大きく剣を振るとガーランドの身体は吹き飛ばされ彼らの前方にあった崖に強かに打ちつけられる。
ウォーリアオブライトは攻撃の手を緩めることはなく、再びガーランドとの距離を詰める。しかし、ウォーリアオブライトが攻撃のために再び剣を構えたその瞬間。

「いにしえの力!」

素早く魔法を詠唱したガーランドの言葉と共にウォーリアオブライトの頭上から雷が降り注ぐ。一瞬手を止めた隙をガーランドは見逃さず、手にした大剣を槍のかたちへと変化させてウォーリアオブライトへと突撃してきた。
そのまま、微かに飛び上がると今度は武器を斧の形へと変形させ、ウォーリアオブライトを頭上から打ちつける―

「ぐっ…」

防ぎきれず地面にその身を叩きつけられたウォーリアオブライトが態勢を整えたが、ガーランドの攻撃は止むことを知らない。


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