Chapter/12-1/4-






「俺…思い出したんだ」

一行と暗闇の雲との邂逅の翌日。
仲間全体を見渡し、そう言って胸を張るプリッシュの姿がそこにはあった。

「思い出したって言われても、何を?」

本気で「分からない」とでも言いたそうに首を捻ったヴァンに、呆れたように息を吐くプリッシュ。言葉にするのなら、「何故分からないのか」と言うところだろうか。
その様子を見守っている仲間達はどっちもどっちだと言いたそうに苦笑いを浮かべている。

「昨日あいつと話してたんだけどな、会いに行きたいヤツがいるって。そいつの居場所、思い出したんだ」
「それを先に言わないか」

ウォーリアオブライトはそう言ってプリッシュに歩み寄る。悪ぃ、と言いながら頭を掻くプリッシュはその実あまり悪かったと思っている様子はないのだが、取り立ててウォーリアオブライトがそのことについて言及することはない。
その表情が真剣なのは彼が現状を憂い、ひとりでも多くの協力者を求めていることを暗に伺わせていた…やはりリーダーとして戦士達を束ねる身、思うことも色々とあるのだろう。

「ただ、ここからはちょっと遠いからな。しかもアイツはひずみの中にこもってやがると来たもんだ。だから近くまで移動して何人かでひずみの中に、ってのがいいんじゃねぇかな」
「うむ…では、一度テントを畳むとするか。プリッシュ、道案内は君に任せて良いだろうか?」
「任せとけ」

自慢げにプリッシュが胸を叩いたのを確認して、ウォーリアオブライトはてきぱきと他の仲間にテントを片付けたり、焚き火の跡を始末したりと言ったような指示を出す。
大人数での移動なので準備も大掛かりではあるのだがそれは彼らにとっても慣れたもの。
小一時間も過ぎれば立てたテントは全て片付けられ、先導するプリッシュとその一歩後ろにウォーリアオブライト、そして更にそこから後ろに仲間達が続く。流石に人数が増えたこともあり、ちょっとした大移動ではある。

「ところで、会いに行きたいとは一体誰なんだ」
「…遠い昔にカオスの戦士として俺たちと戦ってた男…もうきっと、俺や博士しかあいつのことを覚えちゃいねえ。でもさ、カオスの戦士で俺たちに味方してるヤツもいるんだ、あいつももしかしたら…」
「そう、願いたいな」

ウォーリアオブライトとプリッシュのその会話に口を挟むものはない。そもそも口を挟む余地すら存在しない。
と言うよりは口を挟めないと言った方が正しいのかもしれなかった。プリッシュかシャントットのように、どこかで輪廻を逃れたり一度消滅したにも拘らず何故か戻ってきた者でなければ既に記憶に留めている者もいない―そんな戦士の存在を自分たちが知るわけない、のだから。
そして―その会話を、フリオニールは聞くともなく聞いていた。
プリッシュが会いに行きたいと言っているのが誰なのか、それは勿論彼にすら想像がつかない―だが、今フリオニールが考えていることはそんなことではなく。

「それで、そのひずみまではどのくらいの距離があるんだ」
「多分、近くにつく頃には日が暮れちまうんじゃないかな…って思ってる。実際アイツに会いに行けるのは明日になるかな」

ウォーリアオブライトとプリッシュの会話にはなんとなく誰も割り込むことが出来ないまま、ただひたすらにその後ろを着いて歩く仲間達。
仲間の誰にも言えないまま、違う思惑を抱えているフリオニール。
もしかしたら他の仲間達もそうなのかもしれない、ふとそんなことを思った。
向かう先は一つ、皇帝を倒す。だがそれぞれの考えていることはそれぞれに違う方向を向いている…なんとなく、フリオニールはそんな錯覚をしそうになっている。
自分だってそうなのだから他の仲間を咎めることは出来ない…フリオニールはひとつ息を吐き、一瞬だけ振り返る。
視界の先に捉えたのは、ユウナと何事か話し合っているライトニングの姿―

「待て」

ウォーリアオブライトが横に腕を伸ばし、進んでいこうとする仲間達の足を止める。
彼がその「気配」を感じ取ったのはきっと、ウォーリアオブライトにしか分からないのであろう「何か」がそこにあるから…
一行の目の前に現れたガーランドの姿に、全員が一様にそう思っていた―


←  Next→




MENU / TEXT MENU / TOP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -