Chapter/11-4/4-
先ほどまでと違った空気に、張り詰めていた緊張の糸が解けたのか仲間達は笑みを交し合う―そんな中、呟いたのはフリオニールだった。
「カオスの戦士だった奴らも一枚岩ってわけじゃないんだな…暗闇の雲も皇帝に従う気はないようだし」
「同じ神に呼び出されたと言うだけで、馴れ合いを好まない者も多かったからな。そこにいるクジャもそうだ」
まさにその混沌の神の陣営にいたゴルベーザがそう呟き、名を呼ばれたクジャはふんと小さく鼻を鳴らして視線を逸らした。
「今だって馴れ合う為にここにいるわけじゃない。僕は」
「ジタンへの借りを返すのと、あと皇帝とアルティミシアに一泡吹かせるために一緒に行動してるんだよな?それ、もう聞き飽きた」
ヴァンがそう言うとクジャは再び不機嫌そうに視線を逸らしてみせた。ヴァンのほうには特に悪気があるわけではなさそうなので、反論まではしないようではあったが。
そんなやり取りを半ば呆れたような表情で見ていたジェクトが、ふと思いついたように口を開いた―
「ただ、だから分からねえんだよな…アルティミシアやらケフカやらエクスデスが大人しく皇帝に従ってるってのがよ」
「ケフカは従ってるわけじゃないのかもしれない。従っている『ふり』をして何かを企んでいるのかもしれないって、私は思ってる」
ぽつり、小さな声で呟いたティナの方に一行の視線が映る。
ティナは俯きがちではあったが真面目な顔で、言葉の内容はどこか自信なさげではあったがその表情を見る限りは自分の言葉にはっきりとした確信を持っているように感じられて―
その様子に気づいたのだろうか、ヴァンが首を捻りながら問いかける。
「ティナ、何か心当たりがあるのか?」
「元の世界にいた時に…ケフカは己の野望の為に仕えていた主を裏切っていた…ような気がするの。はっきりとは思い出せないけど」
ティナの言葉に数人の表情が変わる。
ケフカとは深い因縁を持つティナの言葉だからこそ、その言葉には妙な説得力が感じられて―ただ、カインだけが何かを言いかけて結局言葉に出来ないままティナから視線を逸らしたことに気づいた者は恐らくいなかっただろうが。
「じゃあケフカはそれでいいとして、エクスデスとアルティミシアはどうなんだ。スコール、なんか心当たりないか?」
「俺に聞く前にお前はエクスデスのことで何か心当たりはないのか」
「おれ、そんな心当たりが出来るほどエクスデスのこと覚えてないから」
バッツとスコールのそのやり取りが耳に入ってきて…そこで、ライトニングの中には小さな迷いが生まれる。
アルティミシアの行動の動機は知っている。だが、それを自分が知っている理由をどう説明したらいいのかがどう考えても思い浮かばないのだ。
アルティミシア本人から聞いた、とはっきり言ってしまえばどこで聞いたのか、どのような状況だったのかと詳しく聞かれることは目に見えている。
「だが、彼らの行動の動機は特に意味があることではないだろう。いずれにせよ、我々は自分たちに襲い来る脅威を払う…ただ、それだけだ」
ウォーリアオブライトのその言葉に、ライトニングが内心安堵していたことに気づいた者はきっといない。
それはきっと、ライトニングの隣に並び立っていたフリオニールでさえも…そう、そのときはライトニングはそう思っていた。
彼女にとって誤算があるとしたらそれは…ライトニングが思っているほど、フリオニールは「全てにおいて鈍い」わけではなかった、ということ。