Chapter/11-3/4-






「…正直気分は良くないけど、戦うつもりがないって言うんなら僕もあんたに危害は加えないよ。その代わり、その言葉が嘘になったらそのときは僕があんたを倒す」
「威勢のいいことだ。だが…お前のその、未熟さを補って余りある心持は嫌いではない」

暗闇の雲の肩から、蛇のようにも見える触手がオニオンナイトに向かって伸ばされる―だがそこに攻撃を加える意図がないのはやはり誰にでも見て取ることが出来て、仲間達を支配していた緊張の気配も微かに和らいだように感じられる。
暗闇の雲は一座を見渡すと、相変わらず妖艶な笑みを浮かべ更に言葉を続ける。

「わしを失望させるでない。そうすれば、利害が一致する時がくれば手を貸してやらんでもない」
「…どういうつもりだ?」

いつの間にやら輪の中心に近づいていたウォーリアオブライトが一歩進み出て、暗闇の雲へと近づく。
暗闇の雲と対峙していたオニオンナイトは驚いたように、そしてラグナは何故か嬉しそうな表情を浮かべながら、ウォーリアオブライトのほうに視線を移した。

「お前達の味方をするのではない―だが、世界の均衡が乱れるとすればその時皇帝はわしの敵となり得る。そうなれば手を貸してやると言うことだ」

ウォーリアオブライトの表情に浮かぶ迷い―どう答えるべきかと彼は迷っているのだろう。
その唇が答えを出すよりも先に、ラグナがどこか嬉しそうな表情のままで軽く首をかしげ、そして暗闇の雲を真っ直ぐに見上げた。

「お姉さんの考えてることはいつもオレたちの手の届かないところにありすぎてオレにはよくわかんないな…ま、一緒には来ないけど味方はしてくれるってこと…で、いいのか?」
「あくまで皇帝の存在がわしにとって害となれば、の話だ…然程遠くない未来にそうなるような気がしてはいるが」

それだけ言い残すと、暗闇の雲の身体はふわりと宙に舞い―それと同時に、彼女の身体を真っ黒な雲が包み込む。
その雲が掻き消えたと同時に、暗闇の雲の姿はその場から消えていた―

「一体何しに来たんだろうな、アイツ」

ライトニングの丁度背後あたりに立っていたジェクトがぽつりと呟く―それに答えを持ち合わせている者は、その場にはいなかった。
ただそれぞれが顔を見合わせ、首を捻ったり何事かを案じるように表情を暗くさせたりしている。

「…あいつに今僕達を騙す理由があるとは思えないんだ…丸ごと信じていいとも思わないけど、疑いすぎることもない…僕はそう思った」

暗闇の雲が消えていった方を見上げながら、オニオンナイトがぽつりと呟く。その呟きに呼応したのか、ラグナが大きく頷く。

「オレも同感だ。気が合うなネギ坊主」
「ラグナと気が合っても正直嬉しくない」

ラグナからはふい、と視線を逸らしながら、オニオンナイトはその視線をウォーリアオブライトの方へと送る。

「僕はあいつと戦う気はない。もしあいつが僕達を騙そうとしているのなら…そのときは、責任を持って僕が倒す。それでいいよね」
「ああ。彼女と因縁を持つ君が戦う意思を持たないというのならば無理に敵対する必要はないだろう」
「うん…頑張らないとね。あいつに観察された結果馬鹿にされるのは悔しいし」

そう呟いて勝気な表情で笑うオニオンナイトはもう、いつもの彼だった。


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