Chapter/11-2/4-






やはりオニオンナイトの声で皆気づいたのか、仲間達は自然とその場に集まり始める―いつの間にかオニオンナイトの斜め後ろあたりにラグナが付き添うように立っていた…奇妙なのは、そのラグナの表情がどこか穏やかにすら見えるということだろうか。

「ま、コイツは子供だから多少の失礼な発言には眼を瞑ってやってくれよ…戦いにきたわけじゃないんだろ、あんた見てたらそれが分かる」
「ラグナ!こいつはそれでも…!」
「敵意がないのは見れば分かるだろ?気持ちは分かるけど、ちょっと落ち着けネギ坊主」

ぽん、とオニオンナイトの兜に軽く触れ、ラグナはもう一度暗闇の雲の方へと視線を向ける…オニオンナイトは拗ねたようにあらぬ方向へと顔を向けた。
ライトニングは黙ってその様子を眺めていたが、いつの間にか自分の隣に立っている背の高い気配に気づいて…それが誰であるのかすぐに気づき、視線は向けないまま口を開いた。

「フリオニール、お前はどう思う?あいつは何をしに来たんだろうな」
「俺にも分からないけど確かに敵意は感じない…暫く様子を見るしかないな」

フリオニールの声が自分だけに向けられているわけではない―今は視線を移せる状態ではないので分からないが彼もきっとライトニングと同じように暗闇の雲たちの一群を注視しているのだろう。
自然と仲間達が集まってきたのか、自分たちの周りも騒がしくなってくる…しかし、視線の先にいる暗闇の雲はその余裕を湛えた笑みを崩すことはなく。

「流石に子供に比べれば話が分かるか。確かに、わしはお前達と戦いに来たわけではない―お前達と共に行くつもりがあるわけでもないが」

暗闇の雲の視線が、一群を取り囲んで様子を窺っている中のどこかに向けられる。それは丁度ライトニングの背後あたり。盛大にジェクトの舌打ちの音が聞こえたので、視線の行く先はきっとジェクトだったのだろう。
やがて暗闇の雲の視線はラグナとオニオンナイトの方へと戻る―それを切欠にしたかのように、ラグナが再び口を開いた。

「…敵対もしないけど和解もしない、ってことか。じゃあ結局何がしたいんだ?」
「あの時死をもって絶望に打ち勝ったお前達が今度はどんな選択をするのか…それに興味がある」
「敵にも味方にもならないけど僕達の動向に興味がある、って事?なんだかやっぱりいまいち信じられないんだけど」

剣をしまうことなく呟いたオニオンナイトの言葉に、暗闇の雲は口の端を微かに上げる―その言葉は予想していた、とでも言うように。

「信じられぬと言うならそれもいい…だが小僧、その態度は敵を増やすことに繋がりかねんぞ。わしは今更お前と事を構えるつもりはないが」
「あんたの説教なんか聞くつもりはないよ」
「だから落ち着けネギ坊主…でも確かに、オレにもお姉さんの考えてることが分からないな。結局どうしたいんだ?」

問い返したラグナに、暗闇の雲は一度目を閉じる―まるで言葉を探しているかのように。
そして、目が開かれたと同時にその唇は滑らかに動き始める。

「この世界が均衡を保っておるのならばそれを乱すまでもあるまい―皇帝のやろうとしていることはまさに均衡を乱すだけだとわしは思っておる」
「…それなら自分で皇帝と戦えばいいだけの話だって僕は思うけど…あんたはそうじゃない、のかな」

多少は落ち着いたのか、オニオンナイトは真っ直ぐに暗闇の雲を見上げている。剣は未だに手にしたままだが、先ほどまで明らかに暗闇の雲に向けられていた敵意は微かに薄れている。
それが分かったのか、ラグナはオニオンナイトの兜に添えたままだった手をそっと離した。

「言っただろう、死をもって絶望に打ち勝ったお前達の行く末に興味がある…と。わしが直接手を下してしまってはお前達の行く末を見ることができぬ」
「僕らを観察してるつもり…ってとこ?」
「言葉を選ばずに言うならそうなるか。わしは誰の敵でも誰の味方でもないし皇帝たちには興味もない。だがお前達が何を選びどう戦うかに興味がある」

その答えとともに、暗闇の雲はふわりと身体を宙に舞わせる…それが攻撃行動には繋がらないことを確認するかのように一呼吸おいて、オニオンナイトはそこでようやっと剣を収めた。


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