Chapter/11-1/4-






いつもなら多少賑やかにすら感じる食事時だというのに、その日の一同の顔はどこか暗い。
何が起こっているのか全くわからないまま進むしかない現状を憂いているようにも、不安に感じているようにも見えるその表情…誰もがその表情の意味を分かっているからこそ、それを咎めることが出来るものもそう多くはないわけで。

「本当は、こんな時こそ笑っていようって…言いたいんですけどね」

ユウナが悔しそうに呟いたその言葉に答えることが出来る者もいなくて―それぞれの胸の裡にある想いはそれでも言葉になることはない。
黙ったままのそれぞれの心にある想い、言葉…その全てを、仲間達の誰もが把握することが出来ない。
不安を抱えている者も、警戒することに疲れを感じている者も、こんな時だからこそ仲間を守りたいと強く願うものもいる。だがそれは言葉にはならず、想いはすれ違い続けるだけ。
力をあわせなければならないときだからこそ、それが致命傷となってしまう気がしていると考えている者もいるのにそれすらも伝わることは結局ないままに、どうにも重い空気の食事時は終わる―
食事を終えても、すぐに眠ろうという気にはならないのか戦士達はそれぞれに今後のことについて話し合っているようだった。

「俺さ、とりあえず会いに行ってみたい奴がいるんだけど…問題は、そいつがどこにいるのか知らねえってことなんだよな」
「それでは意味がないだろう、せめて心当たりくらいはないのか」

ウォーリアオブライトとプリッシュが真面目な顔でそんなことを話しているのを間近に聞きながら、ライトニングは空を眺め何事か考えていた。
彼女が考えていたのはセシルが出会ったというイミテーションのこと。
誰かを探していた―それが皇帝の命であるとするのならば、探していたのは自分か…それともフリオニールかのどちらか、と言うことになるだろう。
自分たちの存在が仲間を危険に巻き込む可能性はないとは言い切れない―そう考えると、ライトニングの気持ちは自然と重くなってくる。
無論、だからと言って仲間から離れたりはするつもりもないし出来ないと思っている。皇帝やアルティミシアが、イミテーションを使役していることを考えれば…自分とフリオニールの2人だけで太刀打ちできるとも到底思えない。
そうなれば少しでも安全な方策を考えた方がいいのかもしれないが、そう簡単に答えが出るものでもなく―ライトニングの思考はただただ堂々巡り。

「…ライトニング」

プリッシュと話していたはずのウォーリアオブライトが不意に、思い悩むライトニングに向かって声をかける。
ライトニングは顔は空を見ていたときのように上へと軽く傾けたまま、視線だけをウォーリアオブライトのほうに移した。

「…何だ」
「何を考えていた?表情が君らしくない」

咎める意図はないのだろうが、考えが思うようにまとまらない今のライトニングにとってはただそれだけのことが奇妙な苛立ちを湧き上がらせる。
勿論、頭では分かっているのだ。彼は彼なりに仲間達を、自分たちの行く末を案じている―だが、今更彼に案じられなくとも自分たちだって考えているのだということが頭のどこかにあって、それが苛立ちに繋がっているのかもしれなかった。

「恐らくお前達と同じことだ…この戦いに勝利する為に自分が出来ることを考えている」
「ただ勝てば良いと言うものではない―この戦いでは我々は誰一人として仲間を失うわけには行かないのだから」

この戦いでは、とウォーリアオブライトが殊更に強調した意味は当然ライトニングにも分かっている。
他の仲間のために誰かが命を賭けるなんて事は今は出来ない―敗北が勝利に繋がると分かっていた「あの時」とは違うのだから、そんな無謀な手段をとることはやはり出来ないと分かっていながらもライトニングはひとつ溜め息をついた。
頭の中に甦るのは、先刻アルティミシアが放った一言。

―私の標的は貴女『だけ』なのだから。

少なくとも自分とフリオニールが皇帝に狙われているのは確かだろう。だが、だからと言って他の仲間が狙われないかといえば決してそうではない。
実際に一度ゴルベーザを狙ったと思われるイミテーションの襲撃があったし、皇帝側にはケフカやエクスデスがいる―彼らが宿敵であるティナやバッツを狙わないという保障はどこにもない。
堂々巡り、ぼんやりと浮かんでは消える様々な考えがライトニングを支配し始めた頃…遠くから聞こえてきた、オニオンナイトの怒鳴り声。
何を言っているのかまでは聞こえない。昼間のクジャとの一件があるが故に大したことではないかもしれないと思いながらもそちらに視線を送る―しかしそこでライトニングの目に映ったのは、暗闇の雲の姿。
そこに対峙しているオニオンナイトは既に剣を抜いてはいるが、それにしては…暗闇の雲の側に敵意が感じられないのが奇妙でもある。
考えるよりも先に脚が動き出していた。暗闇の雲にどう言う意図があるのか分からないが、それでも今の状況で…敵だとするならばその脅威を払う必要があるのだから。


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