Chapter/01-2/4-
「どうした、ジェクトよ」
「ちょっと先行っててくれや。あと2人、『この話』聞かせなきゃならねぇ奴がいんだろ」
それだけ言い残すと、ジェクトは散開した秩序の神の戦士達を追うように走り始めた。
そのジェクトの背を見送ると、ウォーリアオブライトは首をひねりながらも再び歩き始める。ゴルベーザたちはその後に続いて聖域の最奥を目指すのであった。
さて、人を探して走っていたジェクトであったが遠巻きにスコールの背中を見つけるとそちらに駆け寄って後ろからその背中にタックルを決める。
勿論目的は倒すことではなくスコールを足止めすることなわけで、そこまで本気で力を出していたわけではないが―それでも冷静なスコールを驚かせるには充分な衝撃を与えた、ようで。
「な、何のつもりだ」
「この話はお前も聞いとくべきだと思ったんだよ。それとあと1人…」
ジェクトはスコールが逃げられないように、とその肩をしっかりとロックした状態で視線を彷徨わせる。
その視界が、目的の人物を捕らえる。うし、と小さく呟いたジェクトはスコールを引きずったままそちらへと歩き始めた。
引きずられる格好になっているスコールは終始無言だったが、そこで何を考えていたのかは―また、別の話。
「おーい」
声をかけられた側―フリオニールは丁度、ジェクトたちの側に背を向けてライトニングと何事か話しているところだった。
振り返るとそこにはスコールを引きずったジェクト。それを見たフリオニールの表情には決して薄くない驚きが浮かんでいる。
「何なんだ、しかもスコールお前何して…」
「俺が知るか」
短くそう答えてスコールは視線を逸らす。フリオニールはライトニングと視線を合わせると首をひとつひねるが、ジェクトはそんな様子を気にすることはない。
ばん、とフリオニールの肩を叩くと、スコールをそうしているように空いた左腕でその身体をロックする。
「え、ちょっと」
「ちょっとコイツ借りるぜ。これからする話はコイツは絶対聞いておく必要があんだ」
「ちょっと待て、って…」
ライトニングが何も言えないような勢いでそのままフリオニールを引きずって去っていくジェクト…ライトニングはぼんやりとその背中を視線で追いかけることしか出来なかった。
「で、一体なんのつもりなんだ。俺が絶対聞いておく必要がある話って言うのは一体…」
「オレはそう言うの上手くまとめんの苦手でよ。詳しいことはゴルベーザから聞いてくれや」
その言葉に、引きずられる格好のままのスコールとフリオニールは互いの顔を見合わせて首を捻る。
ジェクトの話の内容は全く想像がつかない―だが、ここまで強引に話を聞かせようとするくらいだから自分たちに何か関わりがあることはまず間違いがない。
不審に思いながらもジェクトに逆らうことはなく、彼らが聖域の最奥部に到達した時には既にウォーリアオブライト・ゴルベーザ・セシル・ティーダの4人は車座になって座っていた。
「待たせたな」
「…オヤジ、恥ずかしいからあんまり強引な連れて来かたすんのやめろよ」
フリオニールとスコールを引きずっているジェクトを見ながらティーダが頭を抱えるが、言われたジェクトの側はそれを意に介するでもなくどっかりとその場に腰を下ろした。
ゴルベーザはフリオニールとスコールの顔を確かめるように2人の間に視線を送るとふむ、とひとつ頷いて…そしてその声が静かに聖域だった場所へ響き始める。
「…単刀直入に言おう。皇帝とアルティミシアが手を組み、この世界を支配しようと乗り出している」
「何だと」
ゴルベーザの言葉に、反射的にスコールがそう短く声を立てる。
その視線はフリオニールのほうへ―フリオニールの表情もまた驚きに彩られている。
なるほど、ジェクトが自分たちにこの話を聞いておくべきだと言ったのはそれでだったのかとそこで納得が行った。