Chapter/10-4/5-






「それは僕にも分からない…兄さんやジェクトかもしれないし、他の誰かだったのかもしれないし…」

いつもの如く首を傾げてみせたセシルに、そうかと短く答えてライトニングはまた口を閉ざして歩き出した。
その表情が何かを隠しているように見えた…のは、もしかしたらフリオニールただ1人だけだったのかもしれない。
だがそれでもライトニングの態度にはどこか違和感を覚えて―ただ、セシルたちのいる前でそれを切り出してもいいものかとフリオニールはひとり逡巡している。
その間も誰も口を開く者はない…黙ったまま、ひたすらに仲間達の方を目指して歩き続けている―もうそろそろ、野営地へと戻れるだろう。そう考えたところで5人の耳に届く足音…5人の身体には自然と緊張が走る。
またイミテーションか、それとも皇帝の手のものか―フリオニールとライトニングは目を見合わせ、それぞれに武器を手にかける。セシルは剣を、カインは槍を―そしてゴルベーザはすぐに魔法の詠唱が始められるようにと構えを取った。
足音は一行に近づき…そして、藪の中から姿を見せた、のは…

「探したぞ、バッ…って、あれ?」

きょとんとした表情で一行を見ているのは赤い頭巾の大男。ひとりひとりの顔を順番に眺め、そして首を捻る―何事か考えているかのように。
順番に1人ずつの顔を見渡し、そしてもう一度首を捻る…ともすれば誰かを探しているのかもしれないと思われるようなその表情だが、それが何なのかは彼らにも分からない。

「誰だ、お前ら」
「それはこっちの台詞だ」

カインがそう答えたのも無理からぬ話だが…大男はそれに答えることはない。
無論、フリオニール達は武器を構えた手は緩めない。もしも戦うことになったらいつでも応戦できるようにとそれぞれに態勢は整えたままだが目の前の大男から一切の敵意は感じない。
寧ろ自分たちの姿を見て彼からは敵意や殺気に似た「何か」が消えた…とでも言うべきだろうか。
大男は5人が背後に誰か隠していやしないかとばかりに背後を覗き込んだり頭上から他の誰かがいないかと爪先立って眺めたりしていたが、そこに5人以外の姿が見えないと悟るとがっくりと肩を落とした。

「なんでここにもいないんだ…まあいい、邪魔したな」

そのまま大男はすぐに踵を返し、再び藪の中へと姿を消していった。
暫くすると藪の向こう側から何かが地面にぶつかるような音、それに続いて「あいてっ」などと言う声が聞こえてくる。恐らく何かに躓いて転んだというところだろうか。


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