Chapter/10-3/5-






上空へと舞い上がったカインは槍の穂先を下に向け、イミテーションに向けて落下する。
重力の力と刃の鋭さ、そしてカインが持つ力が見事に調和し、イミテーションの身体を刺し貫く―その身体はカインの槍が突き刺さった場所から崩れ、ただの石くれへと姿を変えた。

「セシル、カイン!無事か!」

イミテーションが崩れ落ちたことを確かめてからフリオニールはそちらへと駆け寄る。その声に、セシルとカインの視線がほぼ同時に様子を窺っていた3人を捉えた。
その表情には微かに疲れは浮かんでいるものの、どこか明るくも見えて。

「どうにかね…それにしても良かった、なんとか僕達だけで食い止めることが出来て」

崩れ落ちたイミテーションにちらりとだけ視線を送りながらセシルはそんなことを呟く。その言葉の意味が分からず、フリオニールは首を捻った。
イミテーションだった石の破片に視線を落としたまま、セシルの言葉は更に続く―

「森の中をイミテーションが歩いているのが見えたんだ―誰かを探しているような素振りだった。だから、何かある前に僕が食い止められればそれでいいと思って」
「しかしひとりで野営地を抜け出すことはないだろう、こんな時に仲間が1人いなくなったとなれば皆がどれだけ心配するか」

カインはひとつ溜め息をつきながらも、付き合いが長いだけにセシルの性格は良く分かっているのだろう。
フリオニールだってそれは同じだ―仲間を守るということに対して時に己の身を顧みないことさえあるセシルの性格はある程度は分かっている、つもりだった。

「何にせよ、皆が心配している…戻るぞ、セシル」
「…心配しなくていいのに、って言いたいところだけど兄さんやカインにまで探しに出てこさせて、悪かったかな」

小さく笑いながら、セシルは野営地のほうに向かって歩き出す―その後に続くように、フリオニールとライトニング…そして、ゴルベーザとカインも足を進め始めた。
そこから暫くの間言葉はない。だが―

「それにしても、だ。私には気になることがあるんだが」

足音だけが響いていた森の中で不意にライトニングが不意に口を開き…全員が足を進めながらライトニングのほうへと視線を送る。
4人分の視線を一身に受けているライトニングは別段その視線に対して表情を変えるでもなく、淡々と言葉を綴っていく。

「気になること?」
「セシル、お前さっき言っていただろう。誰かを探しているようだったと…一体、誰を探していたんだろうな」

一瞬の間。
何故ライトニングがそんなことを気にするのだろう―フリオニールがそんなことを全く考えなかったと言えば嘘になる。
しかし、それを問いかけるよりもセシルがライトニングの言葉への答えを口にしたのが先、だった。


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