Chapter/10-1/5-






…いかに愛し合っていても、この非常時にあまり甘い時間の余韻に浸っているわけにも行かない。
高めあった熱が引くのを待って、微かに乱した着衣を整えたフリオニールとライトニングが何事もなかったかのように野営地に戻った時…未だに仲間達は何事か話し合っていたが、どうにもその表情もあまり明るいものとは言いがたい。
明らかに様子がおかしいと分かるその状況にフリオニールとライトニングは顔を見合わせ、仲間達のほうへと急ぐ―
足音に一番に気づき、ふたりに真っ先に声をかけたのは…ティナ、だった。

「あ、フリオニール…それにライトも」
「どうしたんだティナ、なんだか空気が不穏な気がするんだけど」

フリオニールの問いかけに、ティナは微かに視線を伏せる。
そしてどう言葉にしたものかと逡巡した後、顔を上げるとフリオニールとライトニングを交互に見て、それからどこかはっきりとしない口調ながらも言葉を放った。

「…セシルがいないの」

その言葉にフリオニールとライトニングは再び顔を見合わせティナの言葉に釣られたかのように周囲を見渡す―確かにそこに、セシルの姿はない。
良く見ればセシルと行動を共にしていることの多いカインやゴルベーザの姿もそこには見えなかった。
しかし移動中ならばともかく、移動せずにテントを張ったままにした野営地から仲間がひとりだけ忽然と姿を消すというのもおかしな話ではある。

「見張り当番…は、もう終わっていたか」
「うん。だからどこに行ったのか余計分からなくて…今、ゴルベーザとカインが捜しに行ってはいるけど」

ライトニングの言葉にそう答えたティナは心配そうにあたりを見渡している。勿論、セシルだって子供ではないのだから1人でいても何かあるとは考えにくいが…今は状況が状況だ。
こんな時に誰かに出くわさないとも限らない、そう考えればセシルひとりはぐれたというのは安心できる状況ではないし…それに、仲間達が互いに警戒しあっているこの状況でひとりどこに何をしに行ったのかが全く掴めない。
フリオニールは一度目を閉じ、それからすぐに目を開けた。その瞳には迷いはない。
目の前にいたティナを真っ直ぐに見据えると、フリオニールはいつものようにはっきりとした口調で宣言する。

「俺も探しに行って来る」
「…分かった、私も行こう」

フリオニールの言葉に、ライトニングも至極当たり前のようにそう答えた―無論フリオニールの側にはライトニングひとりを置いていくつもりはなかったのだが、自分が何か言う前に彼女がそう言ったことでフリオニールの中ではライトニングへの信頼がよりつよい者に感じられる。
ライトニングが一緒ならばそんな面倒なことになることもないだろう―フリオニールがそんなことを考えているのを、ライトニングは果たして知っていたのだろうか。

「うん…気をつけてね、2人とも」

ティナの言葉に2人は揃って頷くと、目を見合わせて頷きあい…そして、先ほどまで甘く激しい時間を過ごしていたのとは別の方向に向かってふたり揃って走り始めた。
今は一刻も早くセシルを見つけ出すのが先決―そう思っているからか、自然と走る脚の動きも早くなってくる。


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