Chapter/01-1/4-






戦士達はその日、かつて聖域であった場所の近くにいた。
かつて自分たちを守る神の手の中、今はそこに神はないとは言えその力を間近に感じることが出来るその場所は今でも彼らに安らぎを与えてくれる。
いつものように仲間達と共に、戦いの合間傷つき疲れた身体を休めようとしていた―そこへ。

「邪魔すんぜ」

聞こえてきた声に、いっせいに仲間達がそちらを見る。
声の主―ジェクトの姿を見て取ったヴァンは一瞬不思議そうな表情を浮かべながらも、かつて彼とは共に戦っていた気安さからすぐにその表情から警戒は消えさる。

「あれ、ジェクトじゃん」
「はぁ!?なんでオヤジがここにいるんだよ?」

ヴァンがジェクトの名を呼び、それを聞きとがめたティーダの表情が変わる。言葉にするのなら、面倒そうなものに。
それに対しては笑いが起こったりもするが、それでもここにジェクトがいるということに対しての不審があるのか互いに顔を見合わせたり何事か囁きあったりしている。
そしてそのジェクトに少し遅れて、その場にゴルベーザが現れたことで…彼らの表情はまた変わる。

「ジェクトだけじゃなくて兄さんまで…一体どうしたんだい?」

ゴルベーザが現れたことによって、緊張が幾分ほぐれたような表情を浮かべたセシルがそのゴルベーザに歩み寄る。
その一歩後ろに続く形でカインとユウナも2人に歩み寄った。

「ジェクトさん、それに…セシルのお兄さん、ですか?」
「一体何なんだ、そろいも揃って」

そこでゴルベーザとジェクトは互いの顔を見合わせる。何か言いたいことがあるというのはその様子を見れば誰にでも分かるだろうが、その『言いたいこと』を察することができる者はその場にはおらず―

「一体何の騒ぎだ」

そこへ姿を現したのはウォーリアオブライト。そして、すぐにゴルベーザとジェクトの姿を認めると微かに表情をこわばらせる。
無論、今の2人から敵意が感じ取れないことも含めて…どういう状況であるのか飲み込めずに戸惑っている、といったところだろうか。

「お、丁度いいとこに。ちょっくらおめぇに話があんだよ。どっか、人のいねぇとこ空けられっか」

ジェクトはウォーリアオブライトの姿を認めるとそちらに近づいていき、その肩を無遠慮にばんばんと叩いた。
ウォーリアオブライトは冷静な表情でその手を一旦払い、しかしそれでもジェクトの言葉にはひとつ頷く。

「コスモスの玉座だったあたりならばどうだ」
「私たちはどこでも構わぬ」
「あの、兄さん。僕もその話聞いちゃ駄目かな」

ウォーリアオブライトが歩き始めたところでセシルがそう言ってゴルベーザを見上げる。
ゴルベーザはすぐにそのセシルに視線を移し、一瞬ジェクトの方向に視線を送る―その視線の意味に気付いたのか、ジェクトはひとつ大きく頷いた。

「構わぬ。では行こうか、セシル」
「…セシルが行くんなら…オレも行く」

敢えてジェクトの方から視線を外していたティーダがそこでぽつりと呟いて、当たり前のようにセシルの隣に並ぶ。
そのティーダの様子にジェクトは一瞬眉を寄せるが、仕方ないとでも言いたそうに息を吐いてみせた。

「話すのはいいが足引っ張んじゃねぇぞ」
「なっ…なんだよ、子供扱いすんなよ!」
「親子喧嘩は後にしてくれ」

はぁ、と息を吐いたウォーリアオブライトは聖域のもっとも奥まったところ…かつては神を守る為に存在していた場所へと足を進めた。
それを認めると他の仲間達は不安そうに互いの顔を見合わせながらも、その場にいても仕方ないと思ったのか散開してゆく。
ゴルベーザ、セシル、ティーダがウォーリアオブライトの後に続き、ジェクトはその後ろを行きかけてふと思い出したようにあっ、と声を上げた。


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